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社会学

「SNSが孤独を招く」の嘘

2012年6月20日(水)16時39分
エリック・クリネンバーグ(ニューヨーク大学教授)

 ところが結論部分でマーシュは、フェイスブックは別の形でさらに大きな害をもたらしていると主張する。

「フェイスブックがはらむ真の危険とは、人々が孤独になるよう仕向けることではない。孤独を求める心と虚栄心をない交ぜにすることで、独りでいることの意味を変えてしまう恐れだ」

 フェイスブックのせいで現代人はネットに常に気を取られるようになってしまった。そして外の世界から離れてひと息つくことさえできない「新たな孤独」が生まれたとマーシュは主張する。「自分自身のことをつかの間だけ忘れる機会、外の世界から離れる機会が奪われた」

 やりようはいくらでもあるのにと私は思う。パソコンやスマートフォンのスイッチを切ればいいだけの話ではないか。もしそれが不可能なら、フェイスブックの画面を閉じてグーグルの画面を開けばいい。孤独に関する調査研究のタネはいつだって転がっている。

 うまくネットの助けを借りることができたなら、マーシュもあれほど現実離れした論考を書くことはなかったはずだ。

© 2012, Slate

[2012年5月23日号掲載]

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