最新記事

米大統領選

支持率ガタ落ちでもオバマ指名は確実

「極右」が影響力をもつ共和党に政権を奪われる危険は冒せない、その危機感で民主党は結束している

2011年9月30日(金)15時20分
エレノア・クリフト

民主党内にオバマの再選を阻もうとする者はいない(イリノイ州、8月17日) Jason Reed-Reuters

 不況と支持率低下は現職大統領にとって致命的な組み合わせ。大統領選で苦戦を強いられる前に、党内で厳しい予備選にさらされるのが一般的だ。ところが米民主党では、今のところオバマ大統領に対抗して出馬の名乗りを上げた人物はいない。

 党内でオバマ人気が抜群だから、ではない。むしろティーパーティー主導の共和党に融和的なアプローチを取るオバマを批判する声は多い。8月初めに合意がまとまった連邦債務の上限引き上げも、憲法修正第14条に基づき大統領が単独で決められたはずだという指摘もある。

 中には08年にオバマと民主党指名を争ったヒラリー・クリントン国務長官が大統領になっていたほうが良かった、と言いだすやからまでいる。それでも今回、クリントンをオバマの対抗馬に担ぎ出そうという声はない。

 一般党員と民主党系無党派層を対象とした世論調査でも、予備選を求める声はわずか32%で、対立候補が登場してほしくないという人は59%に上った。

 現実的な判断と言えるだろう。「再選の現実的な可能性という意味では、オバマがヘマをすることはまずない。それは党内の誰にとっても明白だ」と、ベテラン政治アナリストのチャールズ・クックは言う。

 民主党関係者にとって、共和党内で影響力を強めるティーパーティーは極右も同然だ。「共和党の大統領が誕生すれば、ティーパーティーがアメリカを動かすことになる」と、中道左派のシンクタンク「第三の道」のビル・シュナイダーは言う。民主党は「そんな危険を冒すわけにはいかない」。

「初心に戻ってほしい」

 民主党は公民権運動の立役者でもある。「初のアフリカ系大統領の再選を阻みたい人間はいない」と、クックは指摘する。オバマに挑戦状をたたき付ける人物は、政治家としての自分の将来を危険にさらすことにもなりかねない。

 「対抗馬が出てくれば、黒人有権者は激怒するだろう。これは民主党にとってまったくいいことではない」と、シュナイダーは言う。アフリカ系アメリカ人は民主党の最も忠実な支持層であり、オバマの仕事ぶりに落胆しているとはいえ、彼を見捨てることはないだろう。

 そんななか消費者運動家で過去に自ら大統領選に立候補してきたラルフ・ネーダーは、オバマの対抗馬になりそうな人物に声を掛けている。ただし「予備選で(オバマを)倒せる人間はいない」と言う。「対抗馬を立てる目的は、オバマに08年の公約に立ち返らせることだ」

 対抗馬を立てれば、最低賃金や労働者の権利、金融機関に対する税率引き上げと低所得層の税率引き下げといった民主的な争点について、オバマの考えを問いただすことができる。「さもなければオバマの選挙運動は、共和党の極端な発言に対処するだけで終わってしまう」

 環境活動家のビル・マッキベンも、オバマに初心に戻ってほしいと考えている1人だ。マッキベンは、アルバータ州(カナダ)からテキサス州まで石油パイプラインを敷設する計画に反対して、8月20日からホワイトハウス前で抗議行動を組織した。

 前回の大統領選でオバマは、「自分が大統領になれば、『海面上昇のペースは遅くなり、地球は癒やされ始める』と言った。(パイプライン問題は)その男が今もいるかどうかを確かめる格好の試金石だ」と、マッキベンは言う。

 マッキベンと仲間は、08年の大統領選のときの選挙グッズを身に着けてホワイトハウス前に集まった。オバマに初心を思い出してもらうためにだ。

[2011年9月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

VW、25年欧州EV販売でテスラ抜き首位 「ID.

ワールド

マクロスコープ:高市首相人気の要因と課題 選挙後に

ビジネス

EXCLUSIVE-スペースXのxAI買収、投資家

ワールド

EXCLUSIVE-メキシコ、キューバへの燃料提供
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 2
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 9
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中