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共和党

米ねじれ政治の救世主は次期下院議長?

2010年11月4日(木)15時27分
アンドルー・ロマーノ、ダニエル・ストーン(ワシントン支局)

オバマとコンビを結成か

 共和党のジョージ・W・ブッシュ前大統領の時代には、ブッシュの教育改革法案の議会通過に骨を折った。民主党と共和党の話し合いが行き詰まると、両党の実力者の間を精力的に行き来して仲介に努め、ついに妥協案をまとめた。「法案を成立させるためには超党派の精神が欠かせない」と最初から分かっていたと、ベーナーは語っている。

 この超党派の精神は、中間選挙の後にも発揮されるのか。共和党の下院議長が民主党の大統領と協力して政治的成果を挙げた例はたくさんある。例えば90年代半ば、ビル・クリントン大統領とニュート・ギングリッチ下院議長は長時間にわたって腹を割った議論を重ね、数々の成果を残した。

 このコンビは福祉制度改革、財政均衡化、4050億ドルの政府債務返済に向けた政策で合意。未保険の子供たちに医療を提供する計画、メディケア(高齢者医療保険制度)と公的年金制度を維持するための計画を一緒にまとめた。妥協の政治家というよりイデオロギー色の濃い政治家として知られるギングリッチが、これだけのことを成し遂げたのだ。

 ベーナーとオバマがここまで名コンビになるとは思えないが、政治的環境は当時と似ている。中間選挙で共和党が議会を制すれば、オバマは「国民の声が聞こえていない」と言われないために、共和党に歩み寄らざるを得ない。一方の共和党も、ただ反対を唱えるだけでは許されなくなる。国民の大半は共和党が政治に貢献することを期待し、共和党がその役割を果たさなければそのツケを払わせるつもりでいる。

障害は共和党内の世論

 とはいえ、共和党内では、中間選挙で勝てば、ひたすらオバマ政権の行動を妨害する戦略を続けるべきだと主張する人も多いだろう。ティーパーティー系の新人議員は、オバマと妥協するなどもってのほかだと考えるに違いない。

 そうなれば、ベーナーも党内の潮流に乗るほうが楽だと考える可能性もある。「(ベーナーが)党利党略の行動を取らないなどと思い込むべきではない」と、民主党のジョージ・ミラー下院議員(カリフォルニア州選出)は言う。「超党派の会談を開きたいという申し入れに対して、『時間の無駄だ』と取り合わなかったケースがたびたびある」

 最近、ベーナーは報道陣との昼食会で、下院が機能麻痺状態に陥っていると嘆いた。「世界史上最も素晴らしい議論の場であるはずなのに、あまりに議論がなされていない。435人の議員の中に、立法者としての本来の役割を果たしている人はほとんどいない」

 新しい議会の任期が始まる来年1月、ベーナーはついに、この状況を変える力を手にするのかもしれない。問題は、その力を活用する意志があるかどうかだ。

[2010年9月29日号掲載]

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