最新記事

健康

「適度な運動でダイエット」の嘘

13年にわたる研究結果が明らかにしたのは、1日30分程度の運動では体重の増加を防げないというがっかりな事実

2010年3月26日(金)16時55分
シャロン・ベグリー(サイエンス担当)

無駄な努力? ジムなどでの運動は血管系や慢性疾患には効果的だがダイエットにはそれほど効果はない David Moir-Reuters

 みんなの期待を完全に打ち砕くような話に聞こえるかもしれない。本誌記者のクロディア・カルブは子供の肥満に関する記事の中で、健康的な体重を維持したり、適切な体重に戻すためには2つの柱が重要だと書いている。「食事制限」と「運動」だ。だが「運動」の柱は崩壊しようとしている。

 米国医師会報に掲載された研究によると、13年間にわたって3万4079人の中年女性を調査した結果、体重が増えなかったのは週に7時間以上の運動をしている人たちだけだった。連邦政府のガイドラインが推奨する「1日30分週5回」のグループではなかった。

 スポーツジムは、ダンテの『神曲』に出てくる地獄の門と同様の警告文を掲げるべきだろう。「ここに入る者はすべての期待を捨てよ」と。希望を抱いていいのは、運動を少なくとも週7日、毎日60分する人だけだ。

 ハーバード大学医学大学院のイミン・リー准教授率いる研究グループは、1度体重が増えると体重を落としてそれを維持するのはほぼ不可能だという事実をもとに、体重の増加を妨ぐ方法を調べた。すべての被験者は普通に食事を採っていて、ダイエット中ではなかった。結論から言うと、体重の増加を防ぐことができたのは、毎日平均60分運動した人たちだった。毎日、13年間休まずに、だ。有徳の行為に休みは禁物ということらしい。

一度肥満になればもう手遅れ?

 なんともがっかりする研究結果だが、その詳細はこうだ。3時間半〜7時間運動する女性(連邦政府が推奨する2時間半より多い)は、平均して2・6キロ体重が増えた。ガイドライン以下の運動しかしない女性とほとんど変わらない。政府が推奨する運動時間をこなしても(実際は推奨時間の2倍運動していたのだが)、体重を維持できないということだ。体重増を約2・3キロ以下にキープできた人は、もともと体格指数(BMI)が25以下で、毎日少なくとも平均60分の適度な運動をしていた。

 結論は、「適度から激しい運動を週に7時間行う」女性と、「2時間半〜7時間の運動をする」、あるいは「週に2時間半以下の運動をする」女性を比べると、運動時間が少ない2つのグループでは体重増に大きな違いはない。政府が推奨する運動時間の2倍運動する女性と、その半分しか運動しない女性の間には4倍の開きがあるが、体重の増加という点ではそれほど違いはないのである。

 だとすれば、ジム通いをやめる十分な理由になる。

 論文にはこんなくだりもあった。「一度肥満になればもう手遅れかもしれない。少なくとも被験者が行った運動の程度では、体重の増加は防げなかった。標準的なBMを維持するには、1日60分の激しい運動を続ける必要がある」

 運動が肥満を防止するという考えに疑問を呈しているのはこの研究だけではない。もはや共通認識になりつつあるといえる。

体重を増やさないための唯一の方法

 体重を落とすのに運動はなぜ役に立たないのか。誰もはっきりとはわからない。だがタイム誌は昨年、その理由の仮説を打ち立てる素晴らしい特集を組んだ。運動すればのどが渇いて甘い飲み物を飲む、お腹が空いて食べる、運動したご褒美にもっと食べる、運動したから食べても平気だと思ってさらにカロリーを摂取する。「運動で新陳代謝が良くなっているから座っているだけでカロリーを消費する」という理屈もあるが、そんなことはない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 3
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈祷」を中国がミーム化...パロディ動画が拡散中
  • 4
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 5
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 6
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 7
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 8
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中