最新記事

テクノロジー

ウッズと性スキャンダル黄金時代

コミュニケーション手段の進化で、性スキャンダルに新時代が到来した

2009年12月11日(金)17時36分
ニック・サマーズ

深まる疑惑 ウッズが愛人たちに送ったとされる携帯メールや留守電メッセージが次々に浮上 Hans Deryk-Reuters

極上の楽しみといえば、文学という人もいるし、上質なワインと答える人もいる。私はといえば、常軌を逸したセックスキャンダルがいい。

 今なら、何といってもタイガー・ウッズだろう。疑惑は拡大する一方だ。妻との異様な喧嘩に始まり、ある浮気の発覚、複数の愛人の浮上、そして今ではまるでツアー中に出会ったクラブホステス全員と寝ていたかのようだ。ウッズとの関係をほのめかす女性が多すぎてかすんでしまったが、疑惑が浮上した当初、2つの重要なものが発覚した。ウッズが残したとされるパニックぎみの留守電メッセージと恥ずかしい「セックスメール」だ。

 こんな話を持ち出したのには理由がある。私たちを取り巻くデジタルなコミュニケーション手段こそ、セックススキャンダルの黄金時代が始まろうとしている証なのだ。当事者の携帯電話から直接、情事の詳細が送られてくるのだから。

 今までも、セックススキャンダルの詳細はふんだんに報じられてきた。高級売春クラブを何度となく利用していたエリオット・スピッツァー元ニューヨーク州知事、ジョン・エドワーズ元米上院議員の不倫、そしてもちろんビル・クリントン元米大統領とモニカ・ルインスキーの関係。しかし情事の詳細は、もっぱら政府やメディアが金と時間をかけた調査によって暴かれ、一番おいしい情報は証人喚問や宣誓証言で明らかにされた。

現代版の「シャツについた口紅」

 その点、新時代のセックススキャンダルの物証は、当事者の手元に蓄積される。携帯メールや留守電メッセージ、デジタル写真といった形で、たいがいは立場の弱い側がため込む。こうしたコミュニケーション手段を避けたり、履歴データを消し去るのは難しい。ニューヨーク・タイムズ紙は現代の離婚事情やウッズのスキャンダルを扱った記事で、携帯メールは現代版の「シャツについた口紅」だと言い表した。

 こうした証拠を検証するのは心躍る作業だ。例えば、自分の首席補佐官クリスティン・ビーティーとの不倫をめぐる偽証罪などで起訴され、デトロイト市長の職を追われたクワメ・キルパトリックのケース。少し前なら、ありふれたスキャンダルだった。しかし2人が交わした1万4000通にのぼる携帯メールによって、情事の赤裸々な詳細が明かされた。密会したホテルの部屋まで非常階段を使ったことから、会っていた時間まで分かる。

 02年9月24日午後6時56分、ビーティーはキルパトリックにメールを送った。「些細なことだけど言っておかなくちゃ。昨日の夜、車の中であなたの肩に寄りかかっていたとき、何かの歌を歌ってくれたじゃない。それがすごく良かった。あなたのことをもっと好きになっちゃう瞬間だった」

 ジャーナリスティックに一言で表現すると、「なんてこった」。昔なら、傷心の妻がスキャンダルの回想録を執筆するまで味わえなかったような、哀愁の漂うエピソードだ。

 権力のある男は浮気をする傾向があるし、人はセックススキャンダルに目がない。これはアメリカの文化と言ってもいい。非難したければご自由に。それでも、アメリカの「スキャンダル病」は治らない。情事の詳細が分かれば、楽しみはさらに倍増する。人の行動がデータで残されるようになったことで、スキャンダルはもっと面白くなっていく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉氏が出馬会見、物価高「直ちに対策」 日銀とは政

ワールド

米軍がカリブ海で「麻薬密輸船」爆撃 今月3回目 ト

ワールド

パレスチナ議長、国連総会にビデオ参加へ 米政府のビ

ワールド

アングル:米自動車業界、関税の販売価格転嫁もはや不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 2
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で「不敬行為」? ネットでは非難轟轟、真相は?
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 5
    【クイズ】21年連続...世界で1番「ビールの消費量」…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    「ミイラはエジプト」はもう古い?...「世界最古のミ…
  • 8
    イタリアでバズった日本小説って知ってる?――芥川か…
  • 9
    「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世…
  • 10
    トランプに悪気はない? 英キャサリン妃への振る舞い…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 8
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 9
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 10
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中