最新記事

米社会

歩行者天国で渋滞解消!ブルームバーグ流ニューヨーク改造計画

2009年4月7日(火)11時56分
ニック・サマーズ

 たとえば、08年8月の第2・第3・第4土曜日にはパークアベニューを車両通行止めにし、42丁目以南のブロードウェイの2車線を閉鎖した。元交通局長のサム・シュワーツによれば、「縁石と縁石にはさまれた部分(つまり道路)は市の財産であり、自分が使用法を決定できるとブルームバーグは考えている」らしい。

 この実験でわかったのは、供給(車の通れる道路)を減らせば需要(入ってくる車)も減るという意外な事実だ。

 イギリスの交通工学者スティーブン・アトキンズも、90年代の地震で幹線道路が損壊したサンフランシスコで渋滞が減った事実を指摘している。別の都市でも同じような現象が確認されている。

21世紀型の都市計画を

 アトキンズが98年に60カ所を調査したところ、通行止めになるとドライバーは周辺に近寄りたがらないことがわかった。経済学的にいえば、通行止めと聞いたドライバーは移動にかかる労力が増えたと認識し、移動を控える(需要が抑制される)のだ。

 環境保護活動家らは当初、59丁目以南のブロードウェイをすべて車両通行止めにするよう求めたが、2月26日にブルームバーグが発表した計画では、通行止め区間は主要7区間に限定された。

 それによると百貨店メーシーズがある34丁目では南北1ブロック分、タイムズスクエア周辺では5ブロックにわたり、ブロードウェイが歩行者天国となる。これで6番街の渋滞は37%、7番街は17%、9番街は20%減る見込みだ。

 マンハッタンは世界のどんな街とも違うユニークな街だ。だがブロードウェイの通行止めに効果が見られれば、ほかの都市にも同じ手法が広がる可能性がある。サンフランシスコ市交通局は2月24日、市の中心部を走るマーケットストリートの一部について一般車両の通行止めを検討すると発表した。

 「21世紀には道路に対する考え方も変わる」と、ニューヨーク市のサディクカーン交通局長は言う。「人間の移動手段に対する見方も変える必要がある。できるだけ多くの車を街に押し込めばいいというものではない」

 型にはまらない発想とリスクを愛する起業家市長のブルームバーグにとって、通行止めは絶好のアイデアだ。今年11月の市長選で3選を果たしたら、じっくり「歴史に名を残す」プロジェクトに取り組むことだろう。ブルームバーグが明日のニューヨーカーに残そうとしているのは、人と環境にやさしく、クラクションの少ない街だ。これなら誰も文句は言うまい。

[2009年3月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中