トランプやマスクが目指す「人類の火星到達」の本当の実現度...彼らが見落とす宇宙旅行の「現実」とは?

ALL SYSTEMS GO

2025年5月15日(木)17時10分
ジョシュア・レット・ミラー(本誌調査報道担当)

搭乗飛行士の安全が最優先

1月にNASA長官を退任したビル・ネルソンはかつて、火星からのサンプル回収計画の予算110億ドルはあまりに高く、40年の地球帰還予定はあまりに遠いと述べていた。

しかし、コストが火星探査ミッションの障害になるべきではないと、タイソンは言う。彼はさらに、NASAの25年度の予算254億ドルは、連邦政府の歳出全体の0.5%にも満たないと指摘する。


「未踏のフロンティアを広げようという現在の取り組みが将来どのような影響を与えるかについて、今、判断することはできない。現在の私たちが夢に投資することを、未来の社会がどう評価するか、私たちには予想する知恵はない」

ネルソンはアルテミス計画のさらなる遅延を認めつつ、NASAの将来については「楽観的」だと語る。「宇宙飛行士の安全は、私たちのあらゆる意思決定において常に最優先される。それが私たちの指針だ。準備が整うまでは飛ばない。搭乗する人間にとって可能な限り安全を確保したと確信できるまでは飛ばない。次の試験飛行を正しく実施して成功させなければならない。それがアルテミス計画の進め方だ」

ネルソンは、トランプ大統領がNASAの次期長官に指名したジャレド・アイザックマンとも短時間、話をした。10代で決算処理会社を起業した42歳の大富豪アイザックマンは、スペースXの民間宇宙飛行ミッションを2回指揮し、民間人として初めて宇宙遊泳を行った(アイザックマンの広報担当者からは、長官指名の承認公聴会を前にコメントはできないと返答があった)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ住民のリビア移住計画、米大使館が報道内容を否定

ワールド

メキシコ海軍の訓練船、ブルックリン橋に衝突 2人死

ワールド

米最高裁、敵性外国人法での不法移民送還差し止め継続

ワールド

イスラエルとハマスが停戦交渉再開、ガザでは72時間
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 5
    MEGUMIが私財を投じて国際イベントを主催した訳...「…
  • 6
    配達先の玄関で排泄、女ドライバーがクビに...炎上・…
  • 7
    大手ブランドが私たちを「プラスチック中毒」にした…
  • 8
    米フーターズ破綻の陰で──「見られること」を仕事に…
  • 9
    メーガン妃とヘンリー王子の「自撮り写真」が話題に.…
  • 10
    iPhone泥棒から届いた「Apple風SMS」...見抜いた被害…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 8
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 9
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 10
    宇宙の「禁断領域」で奇跡的に生き残った「極寒惑星…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中