【密着ルポ】オープンAIのサム・アルトマンは、オッペンハイマーに匹敵する超人か? 密着して見えてきた、生成AI最前線に君臨する男の素顔と頭の中

THE REAL SAM ALTMAN

2024年2月2日(金)18時50分
エリザベス・ワイル(ニューヨーク・マガジン誌特集担当ライター)

240206p22_APL_06.jpg

「AIのリーダー」は世界中で引っ張りだこだ。昨年はインドのモディ首相を招いたホワイトハウスの晩餐会にパートナーのオリバーと出席 JULIA NIKHINSONーREUTERS

だが、彼を止める方法などあるだろうか。アルトマンは「世界ツアー」の途中、ドイツのミュンヘンで会場を埋め尽くす聴衆に、オープンAIが次世代の大規模言語モデル(LLM)であるGPT-5を公開当初からオープンソースにすることを望むかと問いかけた。

聴衆の「イエス」という返事が会場に響き渡った。アルトマンは言った。「うわ......。まあ落ち着いて。当社は絶対にそうすることはないけど、そういう意見があるのを知るのは興味深い」

昨年8月、アルトマンはオフィスで相変わらず持論を展開していた。私は彼にそれまでの24時間にしたことを尋ねた。「昨日は、仕事ではAIを人間の価値観に合わせることができるかどうかを考えた。それについては技術的にはかなり進歩してきた。それ以上に難しいのは誰の価値観に合わせるかだ」

サンフランシスコの市長との昼食会にも出席、98ページに及ぶ課題リストの削減に取り組み、ジムでウエートリフティング。新入社員を歓迎し、弟たちやオリバーと夕食を共にし、午後8時45分に就寝。

彼という人間はつかみどころがない。善人の中に帝国主義者が潜む。宝物は祖父の形見のメズーザー(ユダヤ人のお守り)。大家族が好きで近い将来オリバーと子供を持ちたい。時々大笑いして床に倒れ込む......。

「どうしたら自分たちが作るものに人々の意思を反映できるか考えている」とアルトマン。「AIはいいことずくめのきれいごとじゃない。損失があり、それを回避しようとするのは至極当然だ。みんな自分が損をする話は聞きたがらない」

世間のイメージは自分の「一面にすぎない」と、彼は言った。

2023 Vox Media, LLC. First published in New York Magazine. All rights reserved. Distributed by Tribune Content Agency

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国特別検察官、尹前大統領の拘束令状請求 職権乱用

ワールド

ダライ・ラマ、「一介の仏教僧」として使命に注力 9

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中