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老化を「治す」時代へ だが老化を病気と分類すれば失われるものが大き過ぎる

IS AGING A DISEASE?

2021年5月20日(木)19時25分
ジョエル・レンストロム(米ボストン大学上級講師)

オーフス大学のラタンは「老化を敵と見なす言葉」の氾濫を懸念する。「老化との闘い」「老化を克服する」といった表現のことだ。

老化は私たちの敵ではなく、全面的に否定すべきものでもない。打ち負かすべき敵と捉えれば、高齢者差別を助長するだけでなく、加齢とともに健康と生活の質を向上させる方法を見失うことになりかねない。

今では多くの老年学者が、健やかな生活を過ごせる「健康寿命」と、生命の長さだけを意味する「寿命」を区別している。体の不調や痛みなどで生活の質が低下した状態での長寿は意味がない。

フレミングは「規制当局と政策立案機関は、健康寿命を延ばすことを重点目標に据えて、老化と慢性疾患を対象とする医療を推進すべきだ」と言う。この方向転換を行えば、病気を引き起こすプロセスの研究を促進できるかもしれない。

そうすれば加齢関連疾患の症状を抑えるだけでなく、より多くの病気を予防することにつながる可能性がある。アメリカでは2060年までに65歳以上の人口が1億人に近づくと、人口問題研究所は予測する。21世紀半ばには世界の人口の16%が65歳以上になる。

老化のプロセスに焦点を当てる大局的アプローチは、より長いだけでなく、より健康的な人生への道筋を示してくれるはずだ。

©2021 The Slate Group


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