【COP30】バングラデシュは国際社会への警鐘...気候変動で「朝、目覚めたら、家がない」
7児の父コシム・ウディンさん(50)にとって、移住は日常となっている。「私の人生で、川に家を奪われたのは30回か35回、いやもっとかもしれない」と明かした。
「再建するたびに、川がまた来る」とウディンさんは水面を見つめながら語る。「でも、どこへ行けばいいんだ。世界中が水だらけだ」
女性たちは、こうした度重なる移住の負担を多く背負っている。2児の母シャヒナ・ベグムさん(30)は、昨年の洪水時に腰まで水に浸かりながら料理をしたことを振り返った。「10年間で6回引っ越した。毎回、やり直すたびに、川がまた奪っていく」
移住のたびに新たな困難が待ち受けており「女性や思春期の少女にとってはさらに厳しい」とベグムさんは嘆く。「乾いた土地を探して、炊事をし、子どもの世話をして......プライバシーも安全もない」
<生き延びるための建設>
クヘヤル・アルガ・チョールでは、地元団体が浸食対策として「ジオバッグ」(砂を詰めた大型袋)を設置したことで、約300世帯が3年間定住を続けている。
「ジオバッグは大きな違いを生んだ」と、10回以上家を失った後にこの地に定住したジョフルル・イスラムさん(39)は言う。「この3年間、川は私たちの土地を奪わなかった。初めて未来に少し自信が持てた」
地元NGOは、季節的な洪水に耐えられるよう地面より高い位置に住宅を建てる「高床式集落」の整備も進めている。
「いつかまた川が来るかもしれない」とイスラムさんは3年間崩れなかった川岸に立ち、少しだけ微笑みながら希望を語った。周囲では子どもたちがしっかりした地面の上で遊び、その笑い声が夕風に乗って響いていた。
「今回は備えている。今のところ、土地は持ちこたえている――そして、私たちもだ」






