最新記事
気候変動

【COP30】バングラデシュは国際社会への警鐘...気候変動で「朝、目覚めたら、家がない」

2025年11月16日(日)17時19分

7児の父コシム・ウディンさん(50)にとって、移住は日常となっている。「私の人生で、川に家を奪われたのは30回か35回、いやもっとかもしれない」と明かした。

「再建するたびに、川がまた来る」とウディンさんは水面を見つめながら語る。「でも、どこへ行けばいいんだ。世界中が水だらけだ」

女性たちは、こうした度重なる移住の負担を多く背負っている。2児の母シャヒナ・ベグムさん(30)は、昨年の洪水時に腰まで水に浸かりながら料理をしたことを振り返った。「10年間で6回引っ越した。毎回、やり直すたびに、川がまた奪っていく」

移住のたびに新たな困難が待ち受けており「女性や思春期の少女にとってはさらに厳しい」とベグムさんは嘆く。「乾いた土地を探して、炊事をし、子どもの世話をして......プライバシーも安全もない」

<生き延びるための建設>

クヘヤル・アルガ・チョールでは、地元団体が浸食対策として「ジオバッグ」(砂を詰めた大型袋)を設置したことで、約300世帯が3年間定住を続けている。

「ジオバッグは大きな違いを生んだ」と、10回以上家を失った後にこの地に定住したジョフルル・イスラムさん(39)は言う。「この3年間、川は私たちの土地を奪わなかった。初めて未来に少し自信が持てた」

地元NGOは、季節的な洪水に耐えられるよう地面より高い位置に住宅を建てる「高床式集落」の整備も進めている。

「いつかまた川が来るかもしれない」とイスラムさんは3年間崩れなかった川岸に立ち、少しだけ微笑みながら希望を語った。周囲では子どもたちがしっかりした地面の上で遊び、その笑い声が夕風に乗って響いていた。

「今回は備えている。今のところ、土地は持ちこたえている――そして、私たちもだ」

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2025トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 9
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中