最新記事
SDGsパートナー

熱に頼らないペットボトル無菌充填とは? 「グリーンアセプティック」が変える、次世代の飲料製造プロセス

2025年11月14日(金)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
GREEN ASEPTIC system

PETボトル飲料製造時のCO₂排出を削減する滅菌システム「GREEN ASEPTIC(グリーンアセプティック)」

<PETボトル飲料の製造で課題となってきたCO₂排出とエネルギー消費。従来の製造法からの転換を進めるアセプティック・システムが、環境負荷とおいしさの両立を目指す>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。

私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


私たちの暮らしに欠かせない存在となったPETボトル飲料。しかしその製造には多くのエネルギーが必要で、CO₂排出量の増加という環境課題を抱えている。

政府が掲げた「2050年カーボンニュートラル宣言」を契機に、産業界には環境負荷を抑えながら品質と安全を守る工夫がいっそう求められるようになった。

飲料業界も例外ではなく、工程全体の見直しが急がれている。

とりわけ、飲料製造プロセスにおける「液処理工程」では、液体を高温で処理する「全量加熱殺菌方式」が採用されており、プロセスの中でも最もエネルギー消費量が多く、持続可能性の観点から課題視されてきた。

この課題に真正面から向き合い、解決策を打ち出したのが株式会社アセプティック・システムだ。

従来の全量加熱から離れ、加熱に依存しない新たな処理プロセスの構築に取り組んできた。

この挑戦は、飲料産業の持続可能性を支えるだけでなく、広く社会全体の環境課題に応える技術革新としても注目されている。

検証が導いた「加熱に依存しない」プロセス

アセプティック・システムは、大日本印刷株式会社(DNP)の生活・産業部門から2003年に独立して設立された、PETボトル無菌充填システムの開発・販売・保守サービスを主軸とする企業だ。

国内市場においてトップシェアを誇り、これまでに世界各国へ200台以上の設備を納入してきた実績を持つ。

同社は、設立以降に培った「無菌充填技術」(無菌環境で飲料を容器に詰める工程)を軸に、飲料製造の現場で課題となる環境負荷の低減と品質保持に取り組んできた。

そうした技術的蓄積を背景に、2021年には新たな挑戦として、「加熱に依存しない」処理プロセスの構築を目指した「Green Aseptic(グリーンアセプティック)」の開発に本格的に着手した。

開発の初期には、世界の研究機関から「超小細菌」と呼ばれる非常に小さな菌を入手し、紫外線(UV)による殺菌効果を検証。

これらの菌は、通常のフィルターでは通り抜けてしまうほど微細で、従来のろ過方式では十分な殺菌が難しいとされていた。

中圧UVランプ

より幅の広い波長の紫外線を高出力で照射できる「中圧UVランプ」

そこで同社は、紫外線の中でも殺菌力が高い海外製の「中圧UVランプ」と「ろ過滅菌フィルター」を組み合わせ、より高い殺菌効果を実現した。

国内では一般的に低圧UVランプが使われているが、同社では中圧UVを採用。さらに、紫外線を反射する特殊な石英管を用いた構造によって、水の隅々にまで紫外線が届く「死角の少ない殺菌環境」を構築した。

この複数の殺菌手法を組み合わせた高度なプロセスこそが、『グリーンアセプティック』の高い安全性と信頼性を支える重要な技術となっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

サファイアテラ、伊藤忠商事による伊藤忠食品の完全子

ワールド

マクロスコープ:高市氏、賃上げ「丸投げしない」 前

ビジネス

メモリーチップ不足懸念、他の半導体注文に影響=中国

ワールド

マレーシアGDP、第3四半期は前年比+5.2% 1
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中