最新記事
SDGsパートナー

微生物の力で豊かな海を守れ...海水中でも分解される新素材を開発したカネカの挑戦

2025年10月23日(木)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

持続可能な素材「カネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet」」を利用した製品

<日本の化学メーカーのカネカが、世界の海を救う。研究者の情熱と微生物の力が織りなす、持続可能な素材「Green Planet」の軌跡に迫る>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。

私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


近年、世界中の海洋に浮かぶプラスチックごみが深刻な環境問題として浮上しており、特にマイクロプラスチックによる生態系への影響が懸念されている。海に流出したプラスチックは長期間分解されず、魚介類や鳥類の体内に取り込まれることで、食物連鎖を通じて人間にも悪影響を及ぼす可能性がある。

この問題は一企業だけで解決できるものではないが、産業界にも持続可能な素材開発への責任が求められている。そんな中、環境負荷を大幅に低減するソリューションとして注目されている素材がある。株式会社カネカが30年以上にわたり研究開発を進めてきたのが「カネカ生分解性バイオポリマー 「Green Planet」」だ。

「Green Planet」で実現する、化学メーカーのサステナブル革命

カネカは、化成品(化学合成によって作られる製品)から食品、医薬品、エレクトロニクスに至るまで多角的に事業を展開する総合化学メーカー。日本のほかに、欧米・アジアにも製造・販売拠点を持ち、グローバルに事業を展開している。「カネカは世界を健康にする。Kaneka thinks "Wellness First"」をビジョンに掲げ、環境・エネルギー・健康・食といった社会課題の解決に注力している。

Green Planetが生分解される様

Green Planetが生分解される様子


その社会課題解決に向けた取り組みの一つであるGreen Planetの開発は、1980年代後半にさかのぼる。まだ海洋マイクロプラスチック問題は認識されていない時期だったが、石油資源に依存しない、環境にやさしいソリューションを提供したいと考え、バイオマス由来のポリマー開発に着手した。研究者は、植物油を体内に取り込んでポリマー(高分子の化合物)を作り出す微生物を求め、全国各地を調査していた。

ところが目的の微生物が見つかったのは、自社の高砂工業所(兵庫県)。その土壌から奇跡的に発見されたのだ。まさに灯台下暗しだと、カネカ社内では今も笑い話のように語り継がれているという。

この微生物が作り出す「PHBH」というポリマーは、土中だけでなく海水中でも分解され、環境にやさしい特性を持つ。しかし、後にGreen Planetの主成分となるこのPHBHは、発見当初はわずかな量しか生産できなかった上、実用化への課題が山積みだった。30年にも及ぶ研究開発の末、カネカは独自の高分子技術と合成生物学を駆使し、効率的な微生物育種・代謝制御技術を確立した。

さらに、従来のプラスチックと同様に使えるよう、カトラリーなどの硬質用途、ストローなどの軟質用途の両方に対応する成型加工技術を開発。培養条件の最適化を通じたスケールアップ技術も開発し、工業化に成功した。

2012年には年間1000トン、2019年には5000トンのPHBHを生産できるプラントを稼働させた。2025年度には1万5000トンの生産能力を持つプラントが稼働予定だ。

循環型バイオものづくり技術

カネカが取り組む、循環型バイオものづくり技術


キャリア
AI時代の転職こそ「人」の力を──テクノロジーと専門性を備えたLHHのコンサルティング
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、EUが凍結資産を接収すれば「痛みを伴う対応

ビジネス

英国フルタイム賃金の伸び4.3%、コロナ禍後で最低

ビジネス

ユニリーバ、第3四半期売上高が予想上回る 北米でヘ

ワールド

「トランプ氏は政敵を標的」と過半数認識、分断懸念も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 9
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中