最新記事
SDGsパートナー

「もったいない」が「たからもの」に?──三本珈琲の地域密着型「食品ロス削減」戦略とは

2025年10月21日(火)16時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

一方、麻袋バッグペイント体験では、地元の専門学校や就労支援施設に協力を仰ぎ、豆の輸送に使われた麻袋をトートバッグにリメイク。ここに参加者が絵を描き、一点もののバッグに仕上げることで、ものづくりの楽しさを共有しながら、地域の若者や就労支援対象者の技術向上・雇用機会の創出にもつながっている。

これは、廃棄物の地域内循環という観点でも、理想的なモデルケースだ。

三本珈琲の麻袋バッグペイント体験の様子

麻袋バッグペイント体験の様子

「もったいない」と感じなくなることへの危機感

取り組みを始めたきっかけは、製造機器の豆の選別能力が向上し、これまで以上にロスが発生するようになったことだった。

「現場社員がロスに慣れ、『もったいない』と感じなくなっていたことに危機感を覚えました」と製造部門統括本部サステナビリティ推進室の正木陽子氏は語る。「今では社員の意識も変わり、啓発活動への協力体制も整ってきています」

三本珈琲の活動は、より多くの人に食品ロス問題に向き合ってもらうことを目標としているが、なかでも子どもたちに向けた活動をより一層重視している。

子ども向けのセミナーでは、最後に「SDGs宣言」を行い、子どもたちが「未来に向けた目標やアイデア」を発表する。そこでは、「好き嫌いせずに残さず食べる」といった小さいながらも具体的な目標が共有され、「行動することの大切さが伝わったと実感できます」と正木氏は語る。

三本珈琲のイベントを通して集まった子供たちの「SDGs宣言」

イベントを通して集まった子供たちの「SDGs宣言」

プログラムに参加する子どもたちは、これからの地球を担う存在であると同時に、将来、三本珈琲の「ファン」になる可能性も秘めており、事業への貢献も期待できる。また、こうした体験は、社員のエンゲージメント向上にもつながっており、普段の業務とは異なる顧客の反応に直接触れることで、社員自身のモチベーションにも好影響を与えている。

現在は、取引先と連携し、取引先の顧客などを対象に行われることが多い啓発プログラムだが、通常業務以外に資源を割くことに対し、理解を示す連携先は多くはないという。今後はプログラムの拡充と、連携先の拡大が目標だ。

「まずは啓発プログラムについて知ってもらい、地域に連携の輪を広げていくために協力できればと考えています。プログラムを通じて、参加者や連携先に『コーヒーの魅力や可能性』を知ってもらう機会が増えれば、それは事業の安定性にもつながるはずです」(正木氏)

さらに、三本珈琲では2030年までにすべての資源を活用する「廃棄ゼロ」を目標に掲げている。

コーヒーという身近な飲み物を通じて、人と地域、社会をつなぐ取り組みは、食品ロス削減の先にある持続可能な社会への一歩となるだろう。

◇ ◇ ◇

アンケート

どの企業も試行錯誤しながら、SDGsの取り組みをより良いものに発展させようとしています。今回の記事で取り上げた事例について、感想などありましたら下記よりお寄せください。
アンケートはこちら

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中