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「もったいない」が「たからもの」に?──三本珈琲の地域密着型「食品ロス削減」戦略とは

2025年10月21日(火)16時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
三本珈琲のコーヒーブレンド体験に参加する子供たち

コーヒーブレンド体験に参加する子供たち

<創業60年を超える老舗コーヒーロースターが挑むのは「食ロス問題」。子供たちへの啓発活動は自社事業にとっても大きな利点になる>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。

私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇

食品ロスをいかに削減していくかは、社会全体の大きな課題となっている。

農林水産省の報告によれば、日本国内だけで年間約460万トン(2023年)もの食品が「まだ食べられる状態」で廃棄されており、食卓だけでなく、流通や製造段階で発生するロスは極めて大きい。とりわけ加工食品における副産物や規格外品の扱いをめぐって、食品業界は持続可能性を問われ続けている。

コーヒー製造の現場も例外ではない。焙煎過程で発生する割れ豆や焦げ豆などは、品質に問題がなくとも廃棄されることが多い。さらに、生豆輸送用の麻袋もまだまだ使い道があるにもかかわらず、大量に廃棄される現実があった。

こうした「もったいない」を見過ごす風潮に危機感を抱いたのが、神奈川県横浜市に本社を構える三本珈琲株式会社だ。

「楽しく」社会問題に向き合えるように

三本珈琲は、横浜で創業して60年以上の歴史を持つ老舗コーヒーロースター。北海道・宮城・神奈川の3拠点に焙煎設備を構え、B to B事業を中心に展開してきたが、近年は全国の空港や商業施設への出店を通じ、B to C事業にも力を入れている。

同社では、国連で持続可能な開発目標(SDGs)が採択されたのと同年の2015年から、「規格外」として廃棄対象になっていた「ロス豆」を使ったコーヒーの製造を開始。そのころから「本来なら捨ててしまうものでも、工夫次第で価値が生まれる」という意識が社内に広がり始めたという。

そんな三本珈琲が特に力を入れているのが、誰もが「楽しく」食品ロス問題に向き合えるような啓発プログラムだ。

「『もったいない』は『たからもの!』」というキャッチコピーを掲げ、ロス豆を活用してオリジナルのコーヒーブレンドを作る「オリジナルブレンド体験」や、使用済みの麻袋でできたバッグに絵を描いてマイバッグに仕立てる「麻袋バッグペイント体験」を行っている。

オリジナルブレンド体験では、品質には問題がないものの製造ラインから弾き出されてしまうロス豆を使用して、自分オリジナルのブレンドコーヒーを作ることができる。

市販のブレンドコーヒーは、産地や種類、焙煎度(焼き加減)が異なるコーヒー豆を混ぜ合わせて作られており、その割合によって味が変わってくる。体験では、味覚センサー技術で数値化された情報をもとに、自分好みの味を設計することが可能で、延べ体験者数は3000人にのぼるという(2025年8月時点)。

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