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日本のSDGsは「動いていない」...蟹江憲史教授の苛立ちと、未来に向けたボトムアップの取り組み

2024年12月28日(土)08時10分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)

防災と気候変動対策

防災と気候変動対策などシナジーを生かして取り組んでいくことが大切だという  Ursula Page-shutterstock

――昨年インタビューをしたときに1つ印象的だったのが、一方で「政策の力が重要、日本は政策面に課題がある」というもの。国による政策と、政治に惑わされないボトムアップの取り組みの両方が大事だということか。

蟹江 そうですね。両方が大事ではある。

――サステナビリティとかSDGsとか環境の分野において、日本の政治がなかなか進まないことへの苛立ちはある?

蟹江 ありますね。

――即答でした(笑)。

蟹江 ありますが、もうそのフェーズは過ぎているというか。

昨年(2023年)が1つのモーメンタムだったと思っている。政府の「SDGs実施指針」が年末に改定されるタイミングだったので、大きく変えていかなければならないと、それに向けて政治にも働きかけたが、残念ながら動かなかった。いろいろな要因があって動かず、難しいと実感した。

やる気のある人たちが進めていく。でも、政治がそれをサポートしないとなかなか大きな動きにならない。補助金を付けるとか、税制上の措置をするだけでなく、スタンダードを作る(標準化する)といったことも含めて。政治にうまく働きかける方法はないものかと、今も思ってはいます。

いま我々の研究でトレンドになっていることの1つに、シナジー(プラスの相乗効果を引き起こす関係性)とトレードオフ(相反する利害を伴う関係性)がある。実際に、複数の課題の間でシナジーが生み出されることがある。

例えば、防災と気候変動。気候変動対策というと(政治は)あまり動かないかもしれないが、防災対策でもあるとすれば動く。研究としても、どういうつながりがあるかを見ていくのは面白いし、より人々の心に響きやすく、政治も動きやすそうなところから攻めるという視点が大切だと思う。

一方で、グローバルな動きとしては、サステナビリティに関するトレンドはもう後戻りしない。スローダウンはするかもしれないけれど、後戻りはしない。つまり、絶対にやっておいたほうがいい。

そのことに気づいてもらい、促進していくしかないとも思っている。

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