最新記事
インタビュー

日本のSDGsは「動いていない」...蟹江憲史教授の苛立ちと、未来に向けたボトムアップの取り組み

2024年12月28日(土)08時10分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)

――「促進する」ということで言えば、企業の取り組みを後押しする「サステナブルビジネス認証制度」(同制度ウェブサイトはこちら)を立ち上げられた。手応えは?

蟹江 我々の(認証を行う上での)キャパがまだ追いついてないために、まだ少数しか認証が済んでいないが、「やってくれ」という声が非常に多い。ありがたいことに、ウェイティングリストにたくさん入っている。

サステナビリティへの流れは強まっていて、例えば(中小企業が)大企業のサプライチェーンに入っていく、あるいはサプライチェーンに留まり続けるために、自社のサステナビリティを証明するものが欲しい、と。特に海外の企業と取引する場合ですね。

B Corp認証(米NPOによるサステナビリティ関連の認証制度)など海外の認証だと、ちょっと日本企業に合わなかったり、対応が難しかったりする。そういう場合に、我々の認証が役に立つと思う。

――「サステナブルビジネス認証制度」の最初の認証企業には、日本フードエコロジーセンター(神奈川県)が入っている。

蟹江 代表の高橋(巧一)さんは非常に面白い人。ああいう会社がどんどん稼いでくれると、世の中の動きも変わってくるんじゃないか。

アメリカがトランプ政権になろうが、こういう取り組みを続けていけば、長期的にプラスになるはず。これから何が起こるか分からない、また戦争が起こるかもしれない(編集部注:この取材はシリアでアサド政権が崩壊し中東がさらに緊迫化する前だった)が、何が起こるかを恐れていても仕方がないとも思っている。

――こうしたボトムアップの取り組みが、政治に惑わされないことにもなる。まさに、レジリエンス(強靭性)でもありますね。



蟹江憲史
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、同大学SFC研究所xSDG・ラボ代表)
内閣府自治体SDGs推進評価・調査検討会委員、日本政府SDGs推進円卓会議構成員などを務め、国内外でSDGsや環境問題を中心に多方面で活躍。国連事務総長の任命を受けた独立科学者15人の1人として「持続可能な開発に関するグローバルレポート(GSDR)2023」の執筆を行った。専門は国際関係論、サステナビリティ学、地球システム・ガバナンス。SDGs研究の第一人者であり、研究と実践の両立を図っている。主な著書に『SDGs(持続可能な開発目標)』など。

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは144円半ばで膠着、値幅60銭 ド

ワールド

IMF、25年サウジ成長率予想3.5%に引き上げ 

ワールド

インド、中国に国境問題の「恒久的解決」呼びかけ 国

ビジネス

インド、マルチ・スズキの要求受け小型車の燃費規制緩
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 10
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中