最新記事
SDGsパートナー

着物のシルクで美しい髪へ「KINUITO」...レクストホールディングスが「想い」をつなぐ理由

2024年11月29日(金)11時00分
固形シャンプー「KINUITO」

2024年11月29日から30日まで有楽町マルイにて開催されるPOPUP SHOPで「KINUITO」の販売を開始。固形で水分量が少ない分、シルク成分(※1)を豊富に配合している。(※1)水溶性フィブロイン(毛髪補修成分・保湿成分)

<「大切な着物を次に活かしたい」という多くの人々の想いが詰まった固形シャンプー「KINUITO」は、日本文化を世界に発信する新たなシンボルとしての期待も>

世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇

役目を終えた着物を美しい髪に役立てる

日本の伝統工芸である着物は、その優美さで世界に誇れる日本文化の1つだ。しかし、時代の変化とともに需要は減少し、タンスの中で眠る着物や、経年劣化で活用が難しくなった着物が増えている。

次の世代に受け継がれる機会が減り、廃棄される運命にあった着物の再活用方法の1つとして誕生したのが、シャンプーバー「KINUITO」だ。

「捨てるしかない」という課題を根本から覆し、新たなかたちで着物に息を吹き込む商品は、エコでありつつ美容効果を兼ね備えた革新的なアイテムとして注目を集めている。

「伝統」と「革新」で環境問題に挑む

「KINUITO」はレクストホールディングス株式会社の子会社であるREGATEが営むリユース事業でのアイデアを元に生み出された。REGATE社は長年「『想い』と『文化』を未来につなぐ」という理念のもと、着物や和装品と人とをつなぐ活動に取り組んできた。

しかし、その中で気づいたのは、「再利用が難しい着物」があるということだった。シミや汚れ、サイズの問題など、どんなに文化的価値があっても「次に活かすのが難しい」と判断される着物が少なくなかったのだ。

たくさんの思い出が詰まっている、大切な着物を泣く泣く手放す顧客の想いを何か別の形で活かすことができないか。日本で日常的に着られていた、この美しい素材を日常生活のなかで使う商品として、その想いを受け継ぐことはできないか。そこで目を向けられたのが、着物の象徴とも言える白いシルク生地であった。

白い反物

現在は着物の裏地や襦袢など白いシルク生地のみが使用されているが、今後は染料付きの着物の再利用や、シャンプーバー以外の美容製品への展開も計画されているという。

シルクには、人間の髪との相性がよいという特徴がある。そこで着物の裏地や着物の下に着用する襦袢(じゅばん)など白い反物のうち、厳しい品質基準に合格したものからシルク液を抽出し、髪に潤いと補修効果を与える成分「水溶性フィブロイン(※2)」を含む美容製品を生み出すプロジェクトがスタートしたのだ。(※2)松田養蚕場の特許成分

しかし、単なるリユースの枠を超えて「新たな価値を再び創造する」という道のりは平坦ではなかった。というのも、着物からシルク成分を効率よく抽出する方法の確立、安全性の確認、そして環境に配慮しながら製品としての完成度を高めるプロセスは、どれも容易ではないからだ。

特に安全性の面から100%シルクである必要があったため、染料の影響を受けないシルク成分「液体シルク®」(*)の安定的な抽出は、試行錯誤を重ねる必要があった。(*)株式会社松田養蚕場の登録商標

さらに技術面だけではなく、ビジネスモデルの確立や市場での支持を得ることも求められた。これまでに経験のない商品開発と既存事業との関連性をどう説明するのか。そもそも事業として成り立つのか。そして何よりもその新規事業が本当に社会的な課題解決に結びつくのかということへの説得力の必要性である。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中