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グリーンスチール

革新技術で挑む鉄鋼業のグリーン化...H2GSが目指すCO2削減95%の挑戦

CREATING “GREEN” STEEL

2024年4月15日(月)11時40分
ジェフ・ヤング

ルクセンブルクを拠点とする鉄鋼大手アルセロール・ミタルは、ベルギー北西部のヘントにあるプラントでランザテックのガス発酵を使った。同社によると、このプロジェクトはCO2排出量を年間12万5000トン削減する一方、約2000万ガロン(約7570万リットル)のエタノールを生産してガソリンに混合している。

「当社はグリーンスチールの最大のメーカーを目指している」と、アルセロール・ミタルのサステナブル開発責任者ジェームズ・ストリーターは語った。彼によれば、CO2排出量についての基準が変化する世界市場に対応するため、鉄鋼の生産者と購入者にとってはコストが極めて重要な懸案事項になるという。

グリーンスチールのコスト見積もりは使われる技術により異なる。生産者はこれらの技術が広がるにつれ、コストは下がっていくと考えている。

「一番の問題は、サプライチェーンに関わる全てのステークホルダーが利益を上げられるかどうかだ」と、ストリーターは言う。「全ての関係者にとって採算が合わなければ、チェーンは断ち切られる」

入山章栄

水素の活用にしろガス発酵にしろ技術的に大胆なアイデアだが、ビジネスとして成立させる上での最大の課題は「規模の経済」を利かせられるかということ。つまり大量に生産してコストを下げることができるかが問われる。SDGs事例には家庭に太陽光パネルを設置するなど、初期投資が少なくすぐに利益が出る「こぢんまり」としたものが多い。一方、製鉄は巨大なシステムと巨額投資を要する「装置産業」の最たるもの。採算が合う高付加価値の鋼材だけでなく、建設資材に使われ大量生産される一般的なH形鋼などもグリーンスチールに換えないと環境問題にはあまりインパクトはない。フォードの大量生産方式がなければ自動車が普及しなかったように、生産面でコストを下げるイノベーションが求められる。

──解説:入山章栄(早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール教授)

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