世界一幸福な国フィンランドは幼稚園から温暖化対策を学ぶ 環境・気候大臣が語る「教育と気候変動対策」
気候変動について、13~15歳の女子5人の意見を聞くこともできた。みな、気候変動のことは日常生活のなかで常に考えたり、友だち同士で話題にしたりしているという。具体的に取り組んでいるアクションについても聞かせてもらったが、そのうち、ファッションの消費について5人は次のような意見を話してくれた。
●ミン
私の母は洋服を直してくれたり、ウォールポケットなどにアップサイクル(廃棄物や不要品を新しいものに作り変え、価値を高めること)してくれるので、それが私のスタイルになっている。
●エンミ
衣類は最小限で、あまり買わない。必要なときだけ買うというポリシーをもっている。
●アヤ
母の友だちは裁縫が得意。その人に頼んで、着なくなった衣類をアップサイクルしてもらっている。
●ラフ
ファッションが大好きなので、買い物はよくするほう。でも可愛いいデザインであっても、長く使えず、環境に悪いことが容易に想像できれば買わない。
●サンリ
衣類はあまり買わない。値段が少し高めでも良い品質なら長持ちするので、そういうものを買う。例えば今日履いている靴は本革で、使えなくなるまで使うつもり。
10代はファッションへの関心が高まる時期だと思うが、温暖化に配慮した消費行動が身に付いているようで感心した。省エネや脱プラスチックの点でも、5人とも日常的に行動に移していると話してくれた。
模範的な実践をしている5人を集めたのかもしれないと一瞬思ったが、おそらく違う。同校はユネスコスクール加盟校(人権や民主主義を促進したり、異文化理解を進める)であり、ウェルビーイング(幸福な状態)について教えたり、2007年から子ども自身が校内で環境活動を推進していたりと、優れた教育を実践している。同校の子どもたちは授業で環境について学び、授業以外でも環境保護、そしてSDGsの達成につながる行動ができるように育っているのだと推測する。
学校を通して「環境を自分ごととして考える」ようになっていることが、社会に出て働いたときの「環境を重視した企業活動」へとつながっていくのだろう。この学校は一例に過ぎない。ミュッカネン環境・気候大臣が「国民一丸で、気候変動のための変革に貢献する」という学校教育の成果は、確実に表れているのだと思う。
今回のヘルシンキでの視察は、意義深い経験だった。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com