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疲れが抜けない人ほど「丁寧」をやめている―禅が教える疲れない休息術

2026年1月27日(火)11時57分
枡野 俊明 (曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー*PRESIDENT Onlineからの転載 )

「ていねいな動作」が心の余裕を生む


「所作を整える」と、

ムダな疲労が消えていきます。

何をするときも、「ていねい」を心がける。それが、禅の極意の一つです。

ただそういうと、忙しい現代人は反発を覚えるかもしれません。


「とにかく時間がないのだから、ていねいにやってる暇はないんですよ。手早くパパッとやって、量をこなさないと、いつまで経っても仕事が終わりません」

あたかも「忙しさとていねいな動作は、両立しない」ようなものいいですが、本当にそうでしょうか?

私はそうは思いません。むしろ、何事もていねいに取り組んだほうが、忙しさが緩和され、時間にも心にも余裕が生まれると思うのです。

たとえば、時間がないからと、雑に仕事を片付けていったとします。手をかけない分、早く終えられるかもしれませんが、成果の質は落ちる可能性が高い。また、あわてる余り、つまらないミスをしてやり直しになれば、かえって「時間がかかる」場合もあるでしょう。

「急がず、あわてず、もっと落ち着いて、ていねいにやればよかった」

と後悔することが少なくないのです。

「ていねい」を心がけると、それだけで自然と心が落ち着きます。

ですから、ミスが生じにくく、成果の質も上がるのです。

逆に、何をするにも「ていねい」を忘れて「雑」に走ると、やることが増えて疲れるし、うまくいかなくて心も疲れます。

忙しさにあわてそうになったら、自分自身に、

「もっとゆっくり、ていねいに。でないと、かえって忙しくなって疲れるだけだよ」

というふうに声をかけてあげましょう。

「所作」を整えれば、「すべて」が整う

「ていねい」を心がけると、もう一つ、いいことがあります。それは、

「三業が整う」

ことです。

「三業」とは、「身業(身体)」「口業(言語)」「意業(心)」という三つの行為を意味します。

その「三業」が整うとは、

「立ち居振る舞いが整うと、自ずと言葉づかいが整う。そうして身と口の両方が整うと、心が整う」

ということです。

もっというと、これら「三業」を整えることが「善因」となって、「善果」に結びつく―仏教ではそう考えられています。

つまり、「三業が整えられている」かどうかが、「善因善果のサイクル」をつくるカギを握る、ということです。

そしてこれは、「心身を健やかに保つサイクル」をつくることでもあります。

みなさんにも身に覚えがあるかと思いますが、忙しくて疲れていたり、何かイヤなことがあって気持ちがどんよりしていたりするときは、なんとなく立ち居振る舞いも言葉づかいも乱れませんか? たとえば、

姿勢がうつむきかげんになる。

表情が暗くなる。

態度が荒っぽくなる。

身だしなみが乱れる。

言葉づかいがぞんざいになる。

......といった具合に。こうした状態が続けば、仕事や人間関係でトラブルが生じ、さらに疲れが生じることになります。それによって、また立ち居振る舞いが乱れ、心が乱れ......と、まさに負のループです。

逆にいえば、きちんと「三業を整える」ことさえできれば、ムダな疲れが生じることがなくなり、心身ともに健やかな状態をキープできるというわけです。

ただその際、いきなり「心を整える」のは難しいので、まずは「立ち居振る舞いを整える」ことを意識するといいでしょう。

日常のちょっとした所作を変えてみるだけでいいのです。そうすることで、自然と気持ちが穏やかになり、やがて心も整っていきます。

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