熱中症対策の新常識、専門家が教える4つの方法──尿の色チェックから手のひら冷却まで
熱中症対策③:深部体温を下げる
熱中症対策で一番重要なのは体温を上げないことです。体温が上がると、脳に血液が流れなくなり、認知機能が落ちてフラフラになったり、きちんとした思考や判断ができなくなってしまいます。
アメリカ生理学会が発行する学術誌『Journal of Applied Physiology』に発表された面白いデータがあるのでここで紹介します。
以下の3つのことをしてもらった後に、気温40℃、湿度17%の環境で、自転車を漕げるところまで漕いでもらいました。
①運動前に17℃の水風呂に入って深部体温を下げた場合(35.9℃)
②通常の体温のままの場合(37.4℃)
③運動前に40℃のお風呂に入って体温を上げた場合(38.2℃)
この中で、一番長く漕げたのは①の直前に体を冷やした場合(56分)でした。最も短かったのは③の31分でした。運動継続時間は、初期体温が低いほど長く、体温が高いほど短くなったのです。いずれの場合も漕げなくなった時点の深部体温は約40℃でした。
実は、我々の体は深部体温が40℃を超えると、これ以上運動すると体が危ないという制限がかかります。運動前に深部体温を下げてできる限り40℃までの余裕をつくっておくことをプレクーリングと言います。
水を張った風呂桶に手足を入れるだけでもOK
そこで、暑い夏場は運動前に水風呂に入って体温を下げておくことが大事です。
水風呂の温度は、20℃以下が適温ですが、25℃ぐらいで浸かる時間を長めにとってもかまいません。水風呂に入らなくても、出掛ける前や帰宅後に水シャワーを浴びるのも良いでしょう。
時間がないときや面倒なときは、10℃から15℃ぐらいの水を張った風呂桶に手足を数分間入れて冷やすだけでも、十分効果が期待できます。
水風呂以外にも、「アイススラリー」という、氷を砕いた液体状のシャーベットのようなものを口から摂取して胃を冷やすのも有効です。
アスリートはアイスベストという特殊なジェルが入った服を着て体を冷やしたり、運動中も体温が上がらないように水をかけたりしています。
一般の人でも、夏場に外に出歩く用事がある場合は、深部体温を冷やすことを意識して、冷たいものを飲んだり、アイスパックで体を冷やしたり、帰宅後は水風呂に入ったりして深部体温を下げるようにしましょう。