熱中症対策の新常識、専門家が教える4つの方法──尿の色チェックから手のひら冷却まで
熱中症対策②:汗の成分に近い水分を摂る
汗をかくと、体の中の水分が失われます。しかし汗をなめるとしょっぱいように、汗は純粋な水分ではありません。
ウォーターローディングや運動時などの水分補給をする場合は、純粋な水よりも体液に近い内容の水分が望ましいとされています。なぜなら、水だけだとすぐに尿で排出されてしまうのと、水だけを大量に摂ると、体液が薄まることで、ナトリウムの割合が減り、低ナトリウム血症、いわゆる「水中毒」になってしまうからです。
人間の腎臓が持つ最大の利尿速度が16ml/分なので、これを超える速度で水分を摂取すると、体内の水分過剰で細胞が膨化し、水中毒をひき起こします。頭痛やめまい、意識がもうろうとする他、ひどい場合は亡くなることもあります。
水分補給として適しているのは、食塩(0.1~0.2%)と糖分(2~2.5%)を含んだものになります。市販の飲料の場合は、ナトリウムの量が100ml中40~80mgが目安です。
また、日本スポーツ協会が提唱している水分補給のガイドラインでは、1時間以上運動する場合には塩分が0.1~0.2%、糖分が4~8%、温度は5~15℃の飲み物を推奨しています。
スポーツドリンクは、糖質濃度4~8%の商品が多く、たとえば「ポカリスエット」は糖度が6.2%と運動中は適していますが、通常時は半分に薄めて飲むことをおすすめします。しかし、そうすると塩分が少なくなるので塩を少々加えると良いでしょう。
汗で失われる成分には個人差がある
スポーツドリンクがない場合は、水1lに砂糖大さじ3、塩小さじ1/4の割合で混ぜて飲むと良いでしょう。
最近では、熱中症対策に経口補水液を飲む人がいますが、通常時に飲むと塩分の摂りすぎになってしまいます。血圧が上がって健康被害をきたす可能性があるので、こちらも飲むなら薄めると良いでしょう。
また、汗の中にはさまざまな成分が含まれています。
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったものは、ほとんどの人の汗に含まれていますが、その量には個人差があります。中には鉄、銅、亜鉛、ビタミンB2・B6・B12、ビタミンDなどの成分が汗に含まれている人もいます。
そこで私は、東京オリンピックの選手支援を目的としたスポーツ庁の委託事業「屋外競技における暑熱対策の総合的研究開発」に取り組みました。
このプロジェクトでは、長距離、競歩、トライアスロンなどの競技中や練習中に選手の汗をトータルで1000検体以上採取し、分析しました。その発汗成分をもとにスペシャルドリンクの粉末「TOPRUNNER」を開発しました。
「TOPRUNNER」は東京オリンピックの選手村に常備され、13競技のアスリートたちに活用してもらいました。パリオリンピックでも活用され、複数の競技でメダル獲得にも貢献しました。現在は特許も取得し、一般向けに発売されています。