世界的経済学者が体験した『うつとの闘い』──50歳で心のバランスが崩れた私の再生録
共著者の内田舞医博は、うつ病や躁うつ病もれっきとした病気であり、脳に大きな生物化学的変化が起きているため、患者が「自分の神経の問題だから」と自力で克服しようとしても無力だという。まずは精神科医の診療を受け、そのような生物化学的変化から逃れるための適切な治療法を見つけなければならない。
さらに、突発的な精神的パニック症状を避けるために、軽い抗不安薬を依存が生じない程度に服用することも有用である。うつも生理的な病気なのだから、一種の被害にあったようなもので、そのような状態で全力で活動できなくても当然だといわれると、自分の心の重荷が取れたように思えた。
しかし、薬で病状を制御できて、病院から退院した後も、患者には社会への復帰、仕事への復帰という大きな試練が待っている。とくに研究者への復帰は大変だった。学者として当然だが、研究発表等で自分の能力をほかの専門家の前で試すには、勇気が必要だった。
日本に帰ることも勧められたが、私はイェール大学の職を続けた。その一方で、日本経済のマクロ経済政策運営に助言する仕事へと、興味の中心を移すことができた。これが実現できたのは、多くの学者の友人たちや、堺屋太一氏や安倍晋三氏といった政策担当者のおかげである。
外国に職を持っていたことで、日本銀行や財務省のような、学者がやや一目置く機関にも比較的自由に意見を述べることができた。そのおかげで、アメリカ主導のプラザ合意を過度に守り続けた結果生じた「デフレ不況の20年」と呼ばれる状況から、アベノミクスの助言者として脱却する手助けができた。
政策研究は政治が絡むため神経をすり減らすと思われがちだが、私にとって政策の目標は国民の福祉をよくすることにある。そのため、知的能力を絶えず評価され、自意識過剰に陥る理論の研究に比べて、重荷に感じることは少なかった。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年2月14日号)の一部を再編集したものです。
内田 舞 , 浜田 宏一 『月うつを生きる 精神科医と患者の対話 』(文春新書 1463)(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


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