なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タンパク質のリサイクル」の仕組み

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<運動は酸化ストレスを誘導することで老化や病気につながりやすく、筋肉組織の破壊を増やし炎症も起こすなど理論的には体に悪いが...>
長寿遺伝子発見者による、最新研究と衝撃の提言書『SuperAgers スーパーエイジャー 老化は治療できる』(CEメディアハウス)の第8章「時計を止める」より一部編集・抜粋。
重要なのは寿命(ライフスパン)ではなく、健康寿命(ヘルススパン)...。
運動の興味深い点は、理論的には、体に悪いということだ。運動は酸化ストレスを誘導し、酸化ストレスは老化や病気につながりやすく、筋肉組織の破壊を増やすし炎症も起こす。
それでも、運動は何歳になっても体に良い。いったい、どうなっているのだろう?
抗酸化物質とホルミシス
定期的な運動はあらゆる老化の特徴に良い効果をもたらすようだ。その理由のひとつは、「ホルミシス(有害なものが少量では益となること)」という作用かもしれない。
この作用が働くと、一定量のストレスが自然防御能の多くを活発化させるため、体を守るのに役立つことがある。適度な運動は代謝率を上げるので、細胞内に酸素遊離基が増える。
かつて、この遊離基は完全に有害だと思われていた。ところが遊離基には複雑な効果があり、有益なものもあることがわかってきた。
たとえば、細胞がひどく損傷する危険があるとき、遊離基からの警告によって内部の抗酸化防御を高めることができる。
このようにホルミシスは、酸化ストレスから体を守る仕組みを活発にする作用であり、回復力を強めるものだと考えられる。
つまり有害なものにさらされることによって、回復力を強化するのだ。運動に伴う短時間の酸化ストレスにさらされると、ストレス全般への防御力が高まり、そのおかげで老化が遅くなる。