「臓器を摘出」する予防法も...がんは「治す」から「防ぐ」時代に、新たな医療アプローチ「VBC」とは?

AN OUNCE OF PREVENTION

2025年1月23日(木)17時44分
アレクシス・ケイサー(医療担当)

もちろん、こうした予防策を全て実践しても癌にかかる人はいる。それでもアイエンガーによれば、健康的な生活習慣を実践している人はそうでない人に比べて、癌の診断を受けた後にたどる経過が良好だという。

生活習慣改善の大きな効果

MSKの「ヘルシーリビング・プログラム」では、新規の癌患者に質問用紙を配布し、運動習慣や仕事のスケジュール、経済状態などを含む生活状況を詳細に尋ねる。それに基づいて、栄養士などの専門職の支援を受けつつ、患者ごとの生活習慣の改善プランを作成する。


もっとも、癌の診断は患者の精神に極めて重くのしかかる。アイエンガーによれば、MSKでは生活習慣の改善プランで患者に過度な負担をかけないよう留意している。「忙しかったり疲れていたりしてプランどおりの生活を送れない場合は、プランを実践可能なものに修正する」

このプログラムで生活習慣の改善に取り組む患者は、力が湧いてきたように感じる場合が多いと、アイエンガーは言う。先行きが不透明な状況で、少なくともこの面では自分で物事をコントロールできていると感じることができるからだ。

人々の健康状態がよくなれば、医療システムにとってもコストの削減という恩恵がある。癌患者が生活習慣を改善すれば、救急搬送されたり、治療開始が遅れたりする確率が下がり、医療費の支出が少なくて済む。

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