日常を変える「テクノロジーの力」 スマホとスマートウォッチがもたらす健康管理革命

BE “SMART” AND STAY HEALTHY

2024年7月18日(木)10時49分
西田 宗千佳(ITジャーナリスト)

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PRESSMASTER/SHUTTERSTOCK

そのためか、スマートウォッチの中でもアップルウォッチは特に人気が高いのだが、iPhoneとセットで使う必要がある、という制約がある。アンドロイド製のスマホを使っている人は別の機器を選ぶ必要があるが、「心電図機能付きのアップルウォッチを使うためにiPhoneを選ぶ」という判断もありだろう。

スマートウォッチだけでの心電図記録にこだわらないのなら、グーグルの「フィットビット・チャージ6」などの、より小さく安価な製品を選んでもいい。サイズが小さく機能も少ないが、歩数や心拍数の把握などが中心ならいい選択肢だ。


ただ、スマートウォッチを選ぶ場合には、注意しなければいけない点もある。

病気の前兆を通知してくれた事例があることから、「スマートウォッチを着けていれば病気を未然に察知してくれる」と考える人もいる。だが実際、これは正しい理解ではない。

スマートウォッチではさまざまな体の情報を得られる。そこから健康情報を把握することもできる。ただ、それが病院の検査で得られる情報と同じかといえば、そうではない。

アップルウォッチの心電図機能は「医療機器」としての認証を得ている。だが、医療機器認定を受けていたとしても、情報の精度や内容は医療機関で検査に使う専門機材とは違う。だから、全ての病気の傾向を把握できるわけではないし、素人が常に確実な判断を下せるわけではない。

では、スマートウォッチは意味がないのかというと、そうではない。

複数の医師に尋ねてみたが、どの医師も「スマートウォッチを着けて管理することはプラスだ」と口をそろえる。その理由は、診断により多くの情報を使えるからだ。

循環器に異常が見つかり、病院で検査を受けるとする。だがそのときも、検査できるのは病院にいる間だけだ。病気によっては既に症状が消えたりし、正しい対処のための情報が得られないこともある。診断のための情報が「点」でしかない、とも言える。

しかしスマートウォッチを使えば、情報はいつでも得られる。精度は病院のものと違っても、長期的かつ日常的な記録があることは大切だ。医師から見れば、診断のための情報が「線」の形で得られることになる。

特に、不整脈に伴う心電図の状況は、日常的な情報があることが望ましいという。気になったらすぐに心電図を取り、診察時にスマホを持っていけば、医師としてはとても有用なのである。

心電図だけでなく、どれだけ歩いているのか、日常の心拍数がどれだけか、という情報が分かることで、医師は健康維持のための適切な指示をすることができる。

このように、自分で判断するためだけでなく、医師が判断の助けとするためにも、スマートウォッチとそこから得られる情報は大きな意味を持っている。

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