日常を変える「テクノロジーの力」 スマホとスマートウォッチがもたらす健康管理革命

BE “SMART” AND STAY HEALTHY

2024年7月18日(木)10時49分
西田 宗千佳(ITジャーナリスト)

newsweekjp_20240717043955.jpg

SOFIKOS/SHUTTERSTOCK

「医療機器認定」か確認を

ただ、どんなスマートウォッチのデータでも問題ないかというと、そうではない。手に届きそうな価格かつ、医学的判断にも使えるもの、という条件が付く。

ネットを検索すると、アップルウォッチ以外にも「心電図搭載」を売りにするスマートウォッチがいくつか見つかる。中にはアップルウォッチなどのメジャーなスマートウォッチが搭載していない「血糖値測定機能」をアピールする製品もある。だが、そうした製品はおすすめしない。


前述のように、スマートウォッチで測れる情報は常に正確なわけではないし、全ての病気の傾向を把握できるわけでもない。

心拍数はともかく、心電図のような機能は特にそうだ。医療用機器認定を得ていて、利用者も多いアップルウォッチなどの場合には、情報が多いこともあり、医師も一定の判断基準を持ちやすい。

派手な転倒を認識して通報

しかし医療機器認定がなく、どういう性質のデータが記録されるのか分からないスマートウォッチの場合、医師の側でもデータの判断が難しい。

特に注意が必要なのは血糖値の計測機能だ。現状では、血糖値をスマートウォッチで正確に測るのは難しく、針などで刺さない「非侵襲型」の製品で、高い信頼を置けるものは存在していない。今年5月時点、日本には血糖値計測機能で医療用機器認定を受けたスマートウォッチは存在していない。

現状の機能が無駄とまでは言わないが、正しいタイミングかつ正しい姿勢で計測しないと正常な値が出ないので、気休め以上のものと考えるのは難しい。

日本糖尿病協会は4月、不正確な測定値で誤った糖尿病治療につながる可能性があるとして、スマートウォッチで血糖値測定を行わないよう警告。米食品医薬品局(FDA)も2月時点で同様に警鐘を鳴らしており、世界的にも注意喚起がなされている。

こうした点から、フィットネスではなく健康維持を目的としてスマートウォッチを選ぶ場合には、一定の信頼性が重要だ。一方、心拍数の計測なら医療機器認定は不要なので、そこまで神経質になる必要はない。

ただ心拍数も製品によって精度は異なる。スポーツでのトレーニング効率を高める場合、心拍数の正確な変化を把握することが重要とされる。健康維持に使う場合も情報が正確であることが望ましいが、それ以上に「同じ機器で日常的に計測し、情報が蓄積されている」ことも重要だ。

それ故に、スマートウォッチは日常的に使い続けることが望ましい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ、鉱物協力基金に合計1.5億ドル拠出へ

ワールド

中韓外相が北京で会談、王毅氏「共同で保護主義に反対

ビジネス

カナダ中銀、利下げ再開 リスク増大なら追加緩和の用

ワールド

イスラエル軍、ガザ市住民の避難に新ルート開設 48
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中