最新記事
栄養

妊婦さんは貧血予防に鉄分の多い「レバーを毎日食べよう」...結果生じるビタミンA過剰摂取の重大リスク

2024年6月12日(水)14時35分
塩野﨑 淳子(在宅栄養専門管理栄養士)*PRESIDENT Onlineからの転載

【ダイエットで肉類を控えると貧血に】

これらの微量ミネラルは、普通に食べていても不足しがちな栄養素で、管理栄養士が病院給食などの献立を立てる際にも、鉄や亜鉛を充足するために食材の組み合わせには頭を悩まされるのです。

ダイエットをしている方も、安易に肉類を控えることで貧血に陥っている方がいらっしゃいます。

「エネルギー」や「脂質」の面だけを見れば、鶏ムネ肉は健康に良いという主張もわかりますが、「貧血予防」という側面から見れば、必ずしも「鶏ムネ肉はヘルシー」とは言い切れないのがわかります。

また、鶏肉は皮部分に脂質が多く含まれるので、鶏モモ肉の皮を取り除いて食べると、かなり脂質をカットすることができます。

皮なしモモ肉とムネ肉を比較すると、モモ肉の方が亜鉛などのミネラルが豊富です。ムネ肉やササミばかりではなく、いろいろな肉のいろいろな部位を食べることが大切です。

【「貧血予防のためにレバーを食べる」の罠】

「レバーは鉄分など栄養豊富で、食べた方がいいと聞くけれど、調理が難しいし、味もあまり好きではない......」という声を聞きます。

先ほど貧血の話題もありましたが、貧血を予防するためにも、無理してでも食べた方がいいのでしょうか。

たしかにレバーには鉄や亜鉛が豊富です。一方で脂肪も豊富ですので、毎日食べていると鉄は充足するかもしれませんが、脂質異常症になるかもしれません。「最近、鉄の多い食品を食べていないな」と感じたとき、たまに食べる程度でいいと思います。

また、あまり知られていませんが、レバーにはビタミンAが桁違いに多く含まれています。ビタミンA自体は重要な栄養ですが、脂に溶けるビタミンのため、どんどん体に蓄えられてしまうと健康被害が生じます(ビタミンA過剰症)。

したがって、ビタミンAには「許容上限量」という、毎日食べられる上限量の目安が設定されているのです。成人のビタミンA許容上限量は、2700μgRAE(レチノール活性当量/日)です。鶏レバーに含まれるビタミンAは、14000μgRAE/100g中です。

【「レバーの取り過ぎ」で「胎児奇形」も】

焼き鳥ひと串が20g程度として、100gの5分の1量でレバー串に含まれるビタミンAは2800μgですね。野菜や果物にもビタミンAは含まれているので、焼き鳥ひと串程度であっても、毎日レバーをとるのはビタミンAの過剰になってしまいます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ヘッジファンド、7─9月期にマグニフィセント7へ

ワールド

アングル:気候変動で加速する浸食被害、バングラ住民

ビジネス

アングル:「ハリー・ポッター」を見いだした編集者に

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中