【医師が勧める40代からの健康診断】がん死因の女性1位、男性2位「大腸がん」の検査と初期症状

2024年4月25日(木)16時49分
石井 洋介 (医師、日本うんこ学会会長)*PRESIDENT Onlineからの転載

【高齢になってからのがんは進行も遅い】

65歳以上のいわゆる高齢者人口は、1985年には10%ほどでしたが、2022年には29.1%となっています。発病の割合としては変わらなくても、母数である高齢者の数が増えているので患者数も増加しているのです。

また、年齢が高い患者が増えると手術や抗がん剤なども利用しにくくなり、治療困難となるため大腸がんによる死亡も増えるというわけです。

年齢が上がってからかかるがんのことを「天寿がん」と呼んだりもします。高齢になってからのがんは進行も遅く、死因としては「大腸がん」と書かれますが、在宅医として多くのがん患者さんを診た経験からしても、そこまでしんどいものではありません。

がんを手術で取っても、手術や入院の方が体に負担となったり、他の病気で亡くなる可能性も高く、手術で必ずしも寿命が延びるとは言えません。

大腸がんによる死亡が減らないもうひとつの理由は対策型がん検診の受診率が低いことです。大腸がんはステージ0、ステージ1の段階で見つけて治療すれば、治る可能性の高い病気です。

高齢(アメリカの学会では75歳)になったら検診しなくても寿命は変わらないといわれていますが、日本では40歳以上、アメリカでは50〜75歳の方に対して大腸がん検診が推奨されています。日本では大腸がん検診の受診率が低く、2019年のデータでは、大腸がん検診の受診率(40〜69歳)は男性で44.5%、女性は38.5%にとどまっているのです。

【日本の方がアメリカより死亡率が2倍以上高い】

これと対照的なのがアメリカで、2000年に38.2%だった大腸がん検診の受診率が2018年には66.8%に上昇しています。その結果、大腸がん患者の死亡率も低下しています。

2020年のアメリカ対がん協会の推計データによると、大腸がんによる死亡者は5万3200人。日本とほぼ同じ数字ですが、人口比は約2.6倍なので、日本の方が大腸がんの死亡率が2倍以上高いということになります。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中