最新記事
サイエンス

知ってた? 低音域の音楽を流すと人は大盛りを注文し、音量が大きいと不健康な食べ物を選んでしまう

Why Restaurant Food Tastes Good

2023年12月30日(土)17時20分
パンドラ・デューワン
レストラン 女性

店内の照明やインテリアの色や音楽によって、食べ物に対する知覚は大きく変わり得る MONKEYBUSINESSIMAGES/ISTOCK

<近年の研究で分かってきた。音楽の使い方次第で、食べ物の味、食べたいもの、食べたい量まで変えられる>

なぜレストランで食べる食事はこんなにおいしいのだろう。

それはシェフたちの長年の研鑽のたまものであるのは間違いない。その一方、全く同じものを自宅で食べたら味は多少違うかもしれないことが、近年の研究で確認されている。

そのことに気付かないままだと、私たちの心理は行く先々のさまざまな仕掛けに操作されることになる。

色、匂い、音、照明──このいずれもが脳による味の知覚に影響を与え、食べ物の味わいを変化させる可能性がある。

食べ物の特徴(明るい色彩に盛り付けられて、しゃれた名前が付いているとか)はもちろんのこと、食べる時の周囲の環境も関係してくるのだ。

学術誌に先ごろ発表された論文で、イタリアのカンパニア大学の研究チームは、周囲の環境が変わると低糖オレンジジュースの味の知覚がどう変化するか調べた。

その結果、暖色の照明で、背景が赤く、周波数の高い音が流れている環境ではジュースはより甘く感じられ、寒色の照明で背景の色が緑、周波数の低い音が流れている環境ではジュースは「濃く」、香りが強く感じられることが確認された。

「音楽の使い方次第で食べ物の味を変えられる『音の味付け効果(sonic seasoning)』には、驚きしかない」と、オックスフォード大学のチャールズ・スペンス教授(実験心理学)は本誌に語った。

【動画】「音の味付け効果」に魅了され「特別な食器」を造った女子大生

スペンスは音が味の知覚に与える影響を幅広く研究してきた。

2017年に別の学術誌にスペンスらが発表した論文によれば、耳に心地よい「甘い」音楽を流すと、「耳障りな」音楽を流したときに比べてチョコレートの味わいが大きく変化したという。

「少しの砂糖が入ったブラックコーヒーもしくはダークチョコレートを渡して、甘い音楽、あるいはビターな音楽をかければ、大多数の人が甘い音楽を聞きながら食べるチョコレートのほうがより甘く感じると答えるはずだ」とスペンスは言う。

先端医療
手軽な早期発見を「常識」に──バイオベンチャーが10年越しで挑み続ける、がん検査革命とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 9
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中