犬は人の表情を読んでいる──あなたが愛犬に愛されているかは「目」でわかる

FOR THE LOVE OF DOG

2023年5月25日(木)14時55分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

230530p18NW_SGK_08.jpg

SENSORSPOT/GETTY IMAGES

アリゾナ大学に犬認知力研究所を創設した進化生物学者で認知科学者のエバン・マクレーンによれば、この実験で分かったのは、犬には抽象的な概念を理解するだけでなく、全く異なる種の生物の心理にも反応する能力が備わっているということだ。

もっと言えば、犬の研究を通じて、人の社会性や、ここまでの文明を築き上げられた秘密を解き明かせる可能性もある。

人の喜怒哀楽を読み取る

犬は人のしぐさだけでなく、人の表情にも注意を払っている。

近年、犬は人の喜怒哀楽を見分けられることが研究によって明らかにされてきた。表情豊かな人の写真を見せられると、無表情の顔を見せられたときよりも、犬の心拍数は上がる。怒っている顔からは目をそむけ、不安そうな顔には関心を向ける。

盲導犬が目の見えない人の目となって交通事故を防ぎ、セラピー犬が心に傷を負った子や、凶悪犯罪で終身刑を言い渡された受刑者、高齢の認知症患者、試験勉強でストレスをためた学生の心を癒やせるのも、これで説明がつく。犬は人の感情を読み取り、それにふさわしい対応をすることができるのだ。

犬の理解力は、はるかに複雑な行動にも及んでいるとみられる。

人間の場合、人の性格を見分ける能力はもともと備わっており、早ければ生後5カ月で芽生える。エール大学で博士号を取得したザッカリー・シルバーは、俳優たちに「悪人」と「善人」役でペアを組ませ、犬が人の性格を見分けているかどうかについて実験を行った。

1人にはクリップボードを盗み、人に危害を加えるふりをしてもらい、もう1人にはフレンドリーな態度を示してもらい、探している人にクリップボードを渡すことにした。

その後、この2人は同時に、犬に餌を差し出した。すると実験に参加した犬37頭中の3分の2までが、フレンドリーな俳優の元に走ったという。

別の実験でも、人がいい加減な合図ばかり送っていると、いずれ犬はその人の命令に従わなくなるという結果が示されている。シルバーに言わせると、「社会的な知性に関して、犬はとても人間に近い」のだ。

犬には双方向コミュニケーションの能力も備わっているらしい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130

ワールド

米主要産油3州、第4四半期の石油・ガス生産量は横ば

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中