最新記事
高齢化社会

シニア男性の死亡リスク、独身は既婚より2~3倍高く 幸福感を左右する存在とは?

2022年10月27日(木)18時56分
杉田俊介(批評家) *PRESIDENT Onlineからの転載
一人暮らしの高齢男性

一人暮らしの高齢男性は幸福を感じにくくなる? goc - iStockphoto


幸せな老後を送れるのはどんな人か。批評家の杉田俊介さんは「配偶者と同居している男性のほうが、一人暮らしの男性より幸福度が高いという調査結果がある。もともと仕事中心だった男性たちが退職や熟年離婚、妻との死別などで孤立し、幸福を感じにくくなるからだろう」という――。

※本稿は、杉田俊介『男がつらい!』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

男性高齢者の「最後にやり残したこと」

高齢者男性についての意識調査や統計を調べてみると、高齢者男性たちの意識が不思議なほどに年齢とともに「成熟」も「成長」もしていかないということに、いささか驚かされてしまう。

高齢になっても若い女性との何らかの性的な関係を望んだり、妻にケアされて精神的に支えてもらえる人生が幸せ、という感じのままなのだ。

たとえば社会学者、坂爪真吾の『セックスと超高齢社会──「老後の性」と向き合う』(NHK出版新書、2017年)によれば、人生の「最後にやり残したこと」として、情熱的な恋愛をあげる男性高齢者が想像以上に多いという。

さらにそうした男性高齢者のニーズに対し、「シニアのための性愛講座」「下半身のアンチ・エイジング」など、「死ぬまでセックス」という風潮を煽るマーケットが存在する。坂爪が例示するのは、愛人契約市場、高齢者専門風俗、アダルトコンテンツの高齢化......などのケースである。高齢者ストーカーも問題になっているという。

年を取れば自然と達観していくわけではない

その背後には、日本の高齢男性たちが置かれた孤独感がある。

相応に年を取っていけば、性欲や承認欲求の問題は自然と解決して、人生に対して達観していく。漠然とそう考えている人も多いかもしれない。しかし、それほど都合よくはいかないのだ。これはもちろん一部の権力や地位を持った男性たちの問題に限らない。それはグロテスクなことに思える。

たとえば、パートナーを失うと、男性はガクッときて、幸福度がものすごく下がることが知られている。

これに対し、女性たちは、夫が死んでもそれほど幸福度が下がらない。これは、人生の中で積み上げてきた女性同士の友達関係や、地域コミュニティとの関係がそれなりにあると言われる。そもそも女性は、夫ひとりに依存していない。地域にもそこそこ根ざして、夫との死別後も楽しくやっていける。男性よりもそうした割合が多い。

既婚男性と独身男性、それぞれの幸福度は?

厚生労働省の統計によると、50歳以上の夫婦の離婚件数は、1970年は5416件だった。これが1990年から2000年にかけて急増し、近年は6万件前後で推移している。40年間で約10倍という計算である。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、第3四半期は黒字回復 訴訟引当金戻し入れ

ビジネス

JDI、中国安徽省の工場立ち上げで最終契約に至らず

ビジネス

ボルボ・カーズの第3四半期、利益予想上回る 通年見

ビジネス

午後3時のドルは152円前半、「トランプトレード」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと
  • 4
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 5
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「ハリスがバイデンにクーデター」「ライオンのトレ…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中