最新記事
メンタルヘルス

男女関係、セックス、摂食障害に悩む26歳の彼女の人生を救ったセラピストの3つの言葉

2022年2月16日(水)16時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

「道で仏陀に出会ったら殺しなさい」

グループセラピーに参加する前、ドクター・ローセンとの2回目の個人セラピーでクリスティはこう告げられる。「道で仏陀に出会ったら殺しなさい」

その言葉の真意は、「セラピストも患者と変わらない必死に生きている人間にすぎないと知っておくべきだ」ということだ。

たとえ有能なセラピストであっても、常に正しい答えを持っているわけではない。大切なのは、いつでも自分の感情を尊重することなのである。

ボーイフレンドとの関係や子どもの頃のトラウマに悩むクリスティに、グループセラピーは、断ち切る必要のあることを露わにして見せる。

人の手を借りることは決して無駄でも悪いことでもないが、他者に答えを求めないこと。問題から目を背けるのではなく、受け入れること。それができるのはほかの誰でもない、自分自身であること。

このことに気がつけたとき、見える景色が変わっていくことをドクター・ローセンは教えてくれる。

groupbook20220216-3.jpg

fizkes-iStock.

「飢えている人は、最初のひと口を食べて初めて飢える」

「飢えている人は、最初のひと口を食べて初めて飢える」。そんな比喩をドクター・ローセンは口にする。

グループセラピーに参加したらどうなるの?というクリスティの質問に、ドクター・ローセンの答えは「これまでにないほど孤独を感じるようになります」。グループの一員になることで、自分がどれほど孤独だったかわかるはずだと言うのだ。

クリスティの心の底にあるのは、自分の存在を肯定してほしいという願望だ。しかし、他人と親密な関係を築きたいと思うならば、あらゆる息苦しさを感じる必要がある。そのためには、まるでつるつるの心に傷をつけていくように、多くの孤独、不安、怒り、恐怖を経験しなければならない。

もちろん、一足飛びに心の癖は治らない。グループセラピーの一歩外に出てしまえば、自分をさらけ出すことができず、恋人との関係をうまくつくれなかったり、答えを求めても煮え切らない反応のドクター・ローセンの反応にキレてみたり。

それはまるで絡まったネックレスを慎重にほぐしていくようなものだ。と同時に、埒が開かず、ネックレスを引きちぎりたくなる衝動も起こる。その繰り返しだ。

しかし、友情、家族、セックス、デート、恋愛、トラウマ......人生のすべてをグループのメンバー全員とシェアし、ドクター・ローセンの出す奇妙な課題に必死に答えていくことで、本当に心許せる人間関係を築いていくクリスティ。

彼女の奮闘の記録をたどることで、生きる勇気が湧いてくる。

心の健康に近道はない。しかし、自分自身で見つけた道はそう簡単に消えたりしない。本書は、「読むグループセラピー」として、あなたの人生のバイブルになる可能性を秘めている。

GROUP! 心がぐちゃぐちゃな私を救ったグループセラピーの記録』
 クリスティ・テート 著
 春田純子 訳
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中