最新記事
カルチャー

実は「ミュージカルはポリティカル」?...社会の闇を描き出す「知っておくべき」社会派作品10選

A MIRROR OF AMERICA

2026年3月26日(木)18時38分
辻 佐保子 (静岡大学人文社会科学部准教授)

『南太平洋』 エミールとネリーは子供たちをめぐり葛藤する(49年初演)

②『南太平洋』 エミール(左)とネリーは子供たちをめぐり葛藤する(49年初演) EVERETT COLLECTION/AFLO

ミュージカルで描かれる人種差別には、作り手たちの切実な問題意識が反映されている。

一方で、それが物語上の「仕掛け」にとどまることも少なくない。49年初演の『南太平洋(South Pacific)』②や57年初演の『ウエスト・サイド物語(West Side Story)』③に現れるのは、アメリカ社会の割り切れなさだ。


『南太平洋』は、第2次大戦下の南太平洋の島を舞台に、フランス出身の農園主エミールと米海軍の従軍看護師ネリー、そして海兵隊のケーブルと島の娘リアットという2組のカップルのロマンスを描く。

彼らは互いに引かれ合うが、ネリーはポリネシア人の前妻との間に子供がいるエミールをなかなか受け入れられず、ケーブルもリアットとの結婚に踏み切れない。

葛藤するケーブルは楽曲「念入りに教え込まれた(You've Got to Be Carefully Taught)」で、差別は生得的でなく社会から教え込まれるものだと歌う。制作時には削除の圧力を受けながらも、この曲が残された事実は、作り手の問題意識の強さを示している。

"You've Got To Be Carefully Taught" - SOUTH PACIFIC (1958)


とはいえ、同作の結末には世間への妥協も見られる。2組のカップルが迎える結末には、当時の異人種間婚姻への忌避がにじむ。差別への批判と妥協が同時に存在する点にこそ、『南太平洋』の複雑さがある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、5000件増の21万件 予想と

ビジネス

エネルギー高のインフレリスク、ウクライナ侵攻時より

ビジネス

OECD、26年の英成長率予想を大幅下方修正 イン

ビジネス

再送-独ポルシェSE、通期決算は9%減益 防衛分野
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 4
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 7
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 8
    100年の時を経て「週40時間労働」が再び労働運動の争…
  • 9
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 10
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中