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大河『豊臣兄弟!』の主役豊臣秀長の真の姿――大和郡山城に刻まれた統治者の性格

2026年1月27日(火)11時36分
香原 斗志 (歴史評論家、音楽評論家*PRESIDENT Onlineからの転載 )

墓石や地蔵をつかった石垣

地政学的に考えても、秀吉が秀長に大和郡山城をまかせた理由がわかる。西にまっすぐ数キロ行けば生駒山地にぶつかり、それを越えれば摂津で大坂平野が広がり、そこには大坂城がある。一方、北上すれば京都がある。つまり、大和郡山城は大坂と京都を守る役割を負うとともに、大坂城と並んで五畿内、すなわち天下を統治する城だったと考えられる。

この城は明治維新を迎えるまで存続したため、少しずつ手が加えられ、地震や風水害のたびに修復されてきた。しかし、主に中心部には、いまも秀長が改修した当時の姿が伝えられている。


毘沙門曲輪から極楽橋を渡って内堀を超え、本丸に進むのだが、この「極楽橋」という名称にピンと来る人もいるかもしれない。秀吉が大坂城の本丸北部に架けた橋と同じ呼び名である。大和郡山城の図に「極楽橋」という名称が記載されるのは18世紀前半なので、秀長の時代にそう呼ばれたかわからないが、当時の城主の柳沢吉里(吉保の嫡男)が、大坂城と並ぶ特別な城だった、という自負のもとに名づけさせたのかもしれない。

極楽橋は明治9年(1876)に撤去されたが、令和3年(2021)に復元された。古絵図および発掘調査から当時の形状を推定したという。この橋が架かる本丸東側の石垣は、ほとんど秀長が積んだ当時のままと考えられ、極楽橋の北側を中心に、墓石や石塔の一部、地蔵などを積み上げた「転用石」がたくさん見られる。

奈良の寺院が書き残した「大迷惑」

大和郡山城の本丸は、当時の城の常識からすれば、石積みなどが異例といえるスケールで、高さ10メートル規模の石垣と深い堀に囲まれている。日本の築城技術はこれ以降、大坂の陣のころまで(幕府に関係する城は17世紀前半まで)、著しく進化したので、私たちはもっと高い石垣や深い堀を容易に思い浮かべる。だが、秀長が大和郡山城を改修した1580年代においては、こうした壮大さは天下人の城ならではのものだった。

ただし、石材の調達にはかなり苦労している。大和郡山城は奈良盆地の西にある丘陵の南端に位置する。盆地を囲む山々からは石を切り出せるはずだが、この時代はまだ、採石場から石を切り出す技術やシステムが整っていなかった。このため、そこら中から石をかき集めたのである。

興福寺の塔頭の一つ、多聞院の院主が書き継いだ『多聞院日記』にも、天正15年(1587)から17年(1589)に石材が大規模に集められたと記されている。墓石や地蔵をはじめ、庭石や建物の礎石までが持ち去られ、大いに迷惑だったという。薬師寺での採石が禁じられたという記録もある。

実際、こうした転用石は石垣の表面だけでも1000を数え、平成26年(2014)に石垣を解体修理した際には、天守台のごく一部を整備しただけで、約600の転用石が見つかり、裏込め石にも多数見つかっている。こうしてなりふり構わず石を集めてでも、豊臣政権の力を示す豪壮な城を築く必要があった、ということである。

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