なぜ自由を叫ぶ者が奴隷を飼った? アメリカの原罪と高貴な理想の衝突を描くドキュメンタリー
The Story of US
もっともバーンズは、映像資料が存在しない時代の物語を語る方法を発明している。大半のデジタル編集ソフトに備わっている「ケン・バーンズ効果」と呼ばれる動画編集機能だ。静止画像の上をカメラが上下左右にゆっくり移動したり、ズームしたりする技法を指し、スティーブ・ジョブズがアップル製品でこの名を使うことを本人に認めさせた。バーンズの作品を見たことがない人でも、卒業式や誕生日のスライドショーで一度は目にしているだろう。
この技術によって、観客は映像の中に入り込んだかのような臨場感を味わえる。『アメリカ革命』でも多くの地図や手紙、絵画を素材に、この技術が存分に駆使されている。
ナレーターは、バーンズ作品の常連であるピーター・コヨーテ。彼の独特の声がシリーズの冒頭で、作品のテーマを説明する。それは「人類史上初めて、全ての人の不可侵の権利を掲げた戦争」だと。
この戦いは先住民の土地や課税、代表権をめぐる入植者とイギリス人の争いにとどまらなかった。革命はやがて「人類の最も高貴な理想をめぐる戦い」に姿を変え、アメリカ人(愛国派)とアメリカ人(国王派)が銃を向け合うことになったと、コヨーテは語る。それは18世紀後半において、人民が自らの意思で自らを治めるという新しい理念の実現を目指した人類初の大いなる実験でもあった。





