ホアキン&ペドロがコロナ禍で狂った町で激突――不快なのにクセになる、アリ・アスターの風刺劇『エディントンへようこそ』

COVID Fever Dreams

2025年12月12日(金)18時59分
サム・アダムズ (スレート誌映画担当)

2人の対立を軸に、人口2600人の町は未知のウイルスへの恐怖にあおられ、政治的分断と陰謀論に踊らされて狂気の淵へと落ちていく。

折しもミネソタ州ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドが白人警官に殺害され、全米でBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動に火が付く。

警察による暴力事件が起きていないエディントンでも主に白人の若者たちが通りに繰り出し、人種差別と白人の特権に抗議する。黒人解放活動家アンジェラ・デービスの著書をこれ見よがしに持ち歩く白人の少女もいる。

要はイラッとさせる登場人物ばかりなのだ。

ところどころにシュールな演出も盛り込まれる。例えばテッドが誘致しようとしているIT企業の名前は「ソリッドゴールドマジカープ」。「ポケモン」のキャラクターと、生成AIを混乱させるフレーズがその名の由来だ。

とはいえアスターがここまで現実に近い映画を作ったのは初めて。あるいは現実のほうがアスターの世界に近づいたのか。アスターの世界では、独りで自分を見詰めすぎる人間は簡単に正気を失う。

コロナ禍の孤独な隔離生活では誰しも過敏になった。私も食料品を消毒したことはないものの、遠くで誰かが咳をするのを聞き、慌ててその場を立ち去った経験はある。

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