『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだけハリウッドに「オマージュ」を捧げられてきたのか
Samurai Meet The World

ただし、『羅生門』で三船が演じた盗賊は、日本映画の伝統的な侍像とはまるで違う。いざ刀を抜いても臆病で、自分が斬られまいと必死に斬りかかる。
三船を世界的なスターに押し上げ、ハリウッドだけでなく世界の映画に圧倒的な影響を与えたのが黒澤の『七人の侍』(54年)だ。
1年近くかけて撮影され、当時の日本映画としては記録的な製作費が投じられた。貧しい農村の用心棒に雇われた7人の侍が盗賊団と対峙する物語は、国内外でヒットして批評家から絶賛された。
『七人の侍』は56年にアメリカで公開され、60年にはジョン・スタージェス監督が『荒野の七人』としてリメーク。侍はメキシコの村を守るガンマンに姿を変えた。
『ナバロンの要塞』(61年 原題:The Guns of Navarone)や『プライベート・ライアン』(98年 原題:Saving Private Ryan)などのような、任務を遂行する男たちの物語という人気ジャンルも生み出した。
『七人の侍』で志村喬が演じる聡明で冷静な侍のリーダーと、三船の荒々しい衝動的な侍志願者は、多くのアクション映画のキャラクターの原型となった。作品としても黒澤の最高傑作の1つとされ、歴代ベスト映画ランキングでは上位の常連だ。





