酒を飲むことが「仕事」だった時代があった、「酔わない身体は努力次第」だった
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<1950年代のソニーでは、酒の飲めない営業を盛田昭夫が毎晩、小料理屋に連れ出したという>
「酒を飲むのも仕事のうち」という表現がある。
20世紀半ばから後半期にかけて、小説やテレビドラマ、ビジネス書などで頻繁に用いられており、ある世代以上には、馴染み深いのではないか。(「はじめに」より)
『「酔っぱらい」たちの日本近代――酒とアルコールの社会史』(右田裕規・著、角川新書)のこの書き出しを読んだ時点で、ガッツリ心をつかまれた。まさに私が、20世紀後半どころか21世紀に入ってもなお、「飲みニケーションを信じて疑わないからさあ」などとほざいていた人間だからである。

著者も指摘するように、本来は仕事にあたらないはずの飲酒は、仕事を進めていくうえで重要なイベントでもあった。
それどころか、そもそも近世の日本において飲酒は、儀礼的な性格すら帯びてもいたらしい。また、農家では「小昼酒」「農酒」として小休憩ごとに飲酒する習慣があったなどと知らされると、なんだか愛しさすら感じてしまう。
だが、やはり世代的に最も共感してしまうのは、仕事帰りに飲んで終電で帰り、翌朝はまた出勤するという20世紀の――とりわけ高度成長期の――飲み方だ。
近世の村の若者仲間が、脱労働的な世界を招来すべく、「酒狂」にもとづく暴走を儀礼的に繰り広げていたのに対して、20世紀の都市社会の酔っぱらいたちは、翌朝も定時に出勤すべく、深夜の駅で暴れまわる。アルコールの力によって、昼間の労働時とは異なる心身状態を喚起されてもなお、かれらは「労働と生産の秩序」によって縛られ続けるのである。(87ページより)
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