村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
A Return to Wonderland

初期の村上の作品にあふれているSFや探偵小説のような要素は、『街とその不確かな壁』からは一掃されている。むしろ瞑想的で、メランコリックで、謎解きは誰かの陰謀ではなく、自分探しの性格を持つ。
「本当の私」がいる場所
壁に囲まれた街は、主人公が高校生のときに出会った少女とつくり上げた想像の世界だ。彼女はある日突然姿を消してしまい、主人公はひどく動揺するが、やがて書籍の取次会社に就職して、ごく普通に年を重ねていく。
ところが40代のある日、穴に落ちて(村上の物語によく登場するモチーフだ)気を失い、壁に囲まれた街で目が覚める。かつて少女は、本当の自分が生きているのはその高い壁に囲まれた街で、彼も心から望めばそこに入れると言っていたのだった。
村上の作品は、唯我論的と評されることが多い。実際、『街とその不確かな壁』の中核を成すのも、自己をいかに構築して維持するかの物語だ。それはしばしば、自らの幸福も他者の幸福も犠牲にして追求される。
極度に内向的な読者は、「この現実が私のための現実ではないという肌身の感覚は、そこにある深い違和感は、おそらく誰とも共有できないものだ」という主人公の感覚に、深く共感するかもしれない。
社交的な読者も、壁に囲まれた街にある種の魅力を感じるかもしれない。そこは確かな静けさが支配していて、季節は予想を裏切ることなく巡ってくる。結局のところ、多くの政治運動の根幹を成すのは、こうした昔ながらの継続性への憧憬ではないか。
壁に囲まれた街にとどまるためには、自分の影と切り離されることに同意しなければならない。ひとたび本体と切り離されると、影はゆっくりと弱っていく。それは主人公の別の一面らしく、より分析的で、冒険的なきらいがある。
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