最新記事
映画

【ポール・ウェラー出演】ロンドン大空襲映画『ブリッツ』が「不発」だった理由、冬休みにはぴったりだが...

Steve McQueen Drops a Dud

2024年11月29日(金)14時45分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
映画『ブリッツ ロンドン大空襲』の場面写真、シアーシャ・ローナン演じるリタとエリオット・へファーナン演じる息子ジョージ

リタ(左)は息子ジョージをロンドンから疎開させようとするが APPLE TV+

<戦火に引き裂かれた母子の運命を描くApple TV+で配信中の映画『ブリッツ ロンドン大空襲』は、キャストの演技もパワフルだがメッセージ性が過剰──(レビュー)>

イギリスの映画監督スティーブ・マックイーンについて、確実に言えることが1つある。彼は決して同じタイプの映画を作らない。

『ブリッツ ロンドン大空襲』予告編

孤独なセックス依存症の男を見つめた『SHAME─シェイム─(Shame)』、誘拐され奴隷として売られた「自由黒人」の回想録に基づく『それでも夜は明ける(12 Years a Slave)』、女たちの現金強奪サスペンス『ロスト・マネー 偽りの報酬(Widows)』に、ロンドンのカリブ系移民社会を描く『スモール・アックス(Small Axe)』


ハンガーストライキを決行したアイルランド人政治犯の伝記『HUNGER/ハンガー(Hunger)』で長編デビューして以来16年、マックイーンは実に多彩な作品を送り出してきた。

2023年には『占領都市(Occupied City)』でドキュメンタリーに挑戦した。現在の平和なアムステルダムのさまざまな場所をカメラで捉え、ナチスが第2次大戦中にそこで行った蛮行を解説する4時間の力作だ(日本公開は12月27日)。

アップルTVプラスで配信中の『ブリッツ ロンドン大空襲(Blitz)』でも同じ時代を取り上げたが、今回はフィクション。ドイツ軍の爆撃が熾烈を極めた1940年のイギリスで母と息子が生き別れになる物語で、これまでで最も伝統的な映画と言えるだろう。

過酷な題材を扱い暴力的な描写もあるが、全体としてはお年寄りから子供まで楽しめる歴史ドラマの部類に入る。

涙を誘う場面あり、(デジタル合成による)廃墟と化したロンドンの壮大な空撮あり、歌や踊りまで盛り込まれている。子供の目を通して悲劇の時代を芸術性豊かに再現した『ブリッツ』は、いい意味で冬休みにぴったりのファミリー映画だ。

祖父(ポール・ウェラー演)の伴奏で家族で歌う

ビジネス
暮らしの安全・安心は、事件になる前に守る時代へ。...JCBと連携し、新たな防犯インフラを築く「ヴァンガードスミス」の挑戦。
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中