最新記事
映画

ラスト15分で「家族ドラマから芸術の域に」...ワケあり3姉妹の再会を描く、映画『喪う』は傑作

A Story of Three Daughters

2024年11月1日(金)13時54分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
映画『喪う』の場面写真、キャリー・クーンが演じる長女ケイティ

反抗期の娘と仕事のストレスを抱える長女ケイティ COURTESY OF NETFLIX

<アパートの1室に立ち入り禁止区域があり、紛争地域がある。Netflixで独占配信中映画『喪う』は圧巻のアンサンブルとラストが光る──(レビュー)>

ネットフリックスで独占配信中の映画『喪う』(原題『His Three Daughters』、アザゼル・ジェイコブス監督・脚本)。

現代版『リア王』と呼びたくなるが、物語の軸となる危篤状態の父親ヴィンセント(ジェイ・O・サンダース)は力ある君主とは程遠い。ニューヨーク市の元中堅職員で、住まいはマンハッタンの中間所得層向けアパートだ。

His Three Daughters | Official Trailer | Netflix

それでも彼をみとるためアパートに集まる3人の娘たちにとっては、ここだけが皆で集まって子供時代を振り返ることのできる王国のようなもの。ここで繰り広げられる姉妹の葛藤は、『リア王』のような後継者争いではなく、子供の頃の記憶と大人になった今の自分を和解させる試みだ。

3人は異母姉妹で、それが物語の進行につれて重要さを増す。長女ケイティ(キャリー・クーン)と三女クリスティーナ(エリザベス・オルセン)の母親は同じだが、次女レイチェル(ナターシャ・リオン)はヴィンセントが最初の妻に先立たれた後に再婚した2人目の妻の連れ子だ。

やがてその妻も死去、長女と三女は成人後に独立してアパートを出て、3姉妹は別々に暮らしている。

ケイティは神経質で時に高慢、地下鉄で30分くらいのブルックリンに住んでいるが反抗期の娘と仕事のことで頭がいっぱいだ。クリスティーナは愛情深い夫と溺愛する幼い娘と共に遠く離れた田舎暮らし。ヨガが日課で、ロックバンドのグレイトフル・デッドの追っかけだった時期もある。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ436ドル安、CPIや銀行決算受

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中