最新記事
AI

ハリウッドスターがストを行っているのはなぜ? AIの「合成俳優」に揺れる米エンタメ界、エキストラをコピペで複製!?

2023年7月29日(土)12時42分
ロイター
ストライキに参加した女優のクリスティン・ウィグ

映画製作会社は100年余りにわたってさまざまなモンスターを画面に登場させてきたが、ついに2023年になって私たちとそっくりの外見を持つ「メタヒューマン」と呼ばれる怪物が現れた。写真はストライキに参加した女優のクリスティン・ウィグ。 FOX 11 Los Angeles / YouTube

映画製作会社は100年余りにわたってさまざまなモンスターを画面に登場させてきたが、ついに2023年になって私たちとそっくりの外見を持つ「メタヒューマン」と呼ばれる怪物が現れた。

6月以降、米ハリウッドでは制作側と俳優が映画やテレビにおける人工知能(AI)の活用に関する議論を戦わせてきたが、その条件を巡って合意できていない。全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)が14日にストライキに入り、63年ぶりに脚本家組合と同時にストを決行することになった理由の1つがこの問題だった。

 
 
 
 

俳優たちが大きな不安を持っているのは、AIで生成された「合成俳優=メタヒューマン」が自分たちの仕事をすっかり奪ってしまうのではないかという点にある。

テレビドラマ「ホームランド」に出演した俳優のカーリー・トゥロさんは「俳優の代わりにAIを活用する計画が重大事でなかったなら、何の迷いもなく契約に盛り込むし、われわれは枕を高くして眠ることができる」と語り、しかし事実はそうでないから芸能の仕事がこれからどうなるか考えると恐ろしくなると説明した。

焦点の1つは、幾つもの俳優のイメージを融合して合成俳優を生み出す取り組み。複数の制作関係者によると、これはまだ実行されていないが、俳優側との契約交渉の一環としてその権利を留保していくつもりだという。

SAG-AFTRAで交渉を統括しているダンカン・クラブツリー・アイルランド氏は、俳優の間には過去から現在、将来にわたる仕事の実績が、自らに取って代わられかねない合成俳優の生成に利用されてしまうのではないとの心配が広がっていると述べた。

クラブツリー・アイルランド氏は、組合としてAI活用の全面禁止は求めていないが、制作会社は組合と話し合い、本物の俳優が務める役を合成俳優に割り振る前に承諾を得てほしいと主張している。

映画やテレビの制作側の関係者によると、大手制作会社は最新の提案でこうした組合の懸念に対応しており、彼らの提案に組合がまだ回答をしていないのが今の段階。コンテンツの創造性に関する選択肢を何とか確保したい制作側はSAG-AFTRAに対し、合成俳優を使いたい場合は事前通告し、交渉の場を設けることに同意している。

日本
【イベント】国税庁が浅草で「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産登録1周年記念イベントを開催。インバウンド客も魅了し、試飲体験も盛況!
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 過去最大

ビジネス

中国、来年の消費財下取りに89億ドル割り当て スマ

ワールド

カンボジアとの停戦維持、合意違反でタイは兵士解放を

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中