最新記事

映画

人種問題、メンタルヘルス、パワハラ、不倫...映画館の客席で心揺さぶられて大泣きする

Crying at the Movies

2023年2月21日(火)18時41分
ジェイミー・バートン

ファースはメンデス監督の多才さに賛辞を惜しまない。メンデスは映画『アメリカン・ビューティー』や『1917 命をかけた伝令』で高い評価を得てきた。

「映画監督には実に多くの能力が求められる。文句なしに完璧な監督は編集、ペース設定、テキスト、俳優、照明、カメラ、スタッフ関連など、キリがないほど多くの仕事をこなす必要がある。3つほどできたらかなり優秀なほうだが、サムは全てに抜かりなく目配りしているようだった」

職人気質の映写技師、ノーマンを演じるのは『ハリー・ポッターと秘密の部屋』で屋敷しもべ妖精ドビーの声を担当したトビー・ジョーンズだ。「サムは驚くほど分かりやすく、説得力ある指示を出す」と言う。「それぞれの役者に言うべきことをちゃんと心得ているようだ」

役者が認める監督の技量

心に希望の灯をともす場としての映画館とそこに働く人々を描いたこの映画で、メンデス監督は初めて単独で脚本を書いた。新型コロナウイルスで都市封鎖になった時期に着想を得たという。

「最初は全く違うものを書いていた」と監督は言う。でも「無意識のうち」に「より私的な小品」を志向していたようだ。「私は立て続けに3本、大型娯楽作を世に出した。007シリーズ2本と『1917』は大勢の人物が動き回り、たくさん爆発が起きる。次は爆発なしの映画を撮りたい気分だったんだろう」

ヒラリーの心に希望の灯をともす黒人青年、スティーブンを演じるウォードは配役が決まると、メンデスがスティーブンの人物像を固めるのを手伝った。白人のメンデスは、差別を受ける側の気持ちを勝手に代弁してはいけないと感じていたらしい。

「監督はこの役柄や脚本について、僕の言うことをとても熱心にオープンに聞いてくれた」と、ウォードは言う。

スティーブンの母親役を務めたのはターニャ・ムーディだ。彼女は、メンデスが人種問題を扱うために黒人俳優の協力を得たことは良しとしながらも、当事者でなければ書けないわけではないとクギを刺す。他者の痛みは分かるはずがないと「決め付けたくない」と言うのだ。

「自分と違うジェンダーや人種のことを書いてはいけないなんてルールはない。書けばいい。遠慮することはない」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 10
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中