最新記事

プロ野球

佐々木朗希が塗り替えた「世界最高の投球」、アメリカの評価と「8回降板」の是非

Perfect Pitcher, Perfect Game

2022年4月27日(水)11時43分
ジョシュ・レビン(スレート誌記者)
クレイトン・カーショウ

4月13日(日本時間14日)、カーショウも完全試合ペースの投球を続けながら80球で降板した Bruce Kluckhohn-USA TODAY Sports-REUTERS

<前代未聞の連続完全試合も目前だった記録破りの投手はもはや世界レベル。佐々木朗希の偉業にアメリカの期待も膨らむ>

千葉ロッテマリーンズの20歳の投手、佐々木朗希が4月10日、日本プロ野球で28年ぶりの完全試合を達成した。

安打も四死球も失策もゼロで、相手チームの打者を一度も出塁させずに勝利する完全試合は、最もまれな偉業の1つだ。MLB(米大リーグ)史上で、公式に完全試合が記録されたのはわずか23回。日本プロ野球では、佐々木が歴代16人目だ。

若き投手の完璧なパフォーマンスは、完全試合の基準に照らしても桁外れだった。時速160キロ級の超速球と、変化球フォークボールのコンビネーションが特徴の佐々木はこの試合で、日本プロ野球記録に並ぶ三振19個、新記録となる13者連続三振を奪った。

完全試合後のヒーローインタビューで、佐々木は「最高です」と語った。その言葉に間違いはないだろう。

先発投手の投球内容をおおざっぱに評価するには、米スポーツライターのビル・ジェームズが考案した「ゲームスコア」が役に立つ。

この指標のスタート地点は50ポイント。アウトを1つ奪うごとに1ポイント、三振1つごとに1ポイント、5回以降は1イニングを投げ終えるごとに2ポイントを加算し、四球1つにつき1ポイント、被安打1本、および自責点以外の失点1点につき2ポイント、自責点1点につき4ポイントを減点してスコアを算出する。

平均は40~70ポイントで、80~90点台なら異例の高さだ。MLBの9イニングでの最高記録は105ポイント。1998年、シカゴ・カブスのケリー・ウッドが20三振を奪った試合(1被安打1四球)で残した記録だ。今回、佐々木は完全試合で106ポイントを記録した。

だが、すごいのはここからだ。世界の主要野球リーグの歴史上、おそらく最高のピッチングをした1週間後の4月17日、この「令和の怪物」は先発試合でまたも完璧な投球を披露。8回まで無安打・無走者を続けた。

8回での降板は「あり得る」決断

とはいえ、2試合連続完全試合を目指すことはできなかった。元シカゴ・ホワイトソックスの井口資仁・ロッテ監督が、8回で佐々木を降板させたからだ。双方無得点の試合は、延長戦の末に1対0でロッテが敗れた。

井口の決断は、あり得ないものとは言えない。若手選手ながら、佐々木は既に腕の故障を経験している。

前代未聞の決断でもなかった。今年4月14日には、ロサンゼルス・ドジャースのデーブ・ロバーツ監督が、7回まで完全試合ペースの投球をしていた34歳のエース、クレイトン・カーショウを球数わずか80球で交代させている。4月17日の試合で、佐々木は8回になっても時速163キロの球を投げたが、球数は102球に達していた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

「米国の関税率20%は一時的」と台湾、引き下げ交渉

ビジネス

投機含め為替市場の動向を憂慮=加藤財務相

ワールド

トランプ氏、対日関税15%の大統領令 7日から69

ワールド

韓国7月輸出は前年比5.9%増、予想上回る チップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中