最新記事

映画

2021年最大のヒット映画は、中国がアメリカに勝った「愛国」戦争映画

Biggest Box Office Movie of 2021 Is Chinese Film About U.S. Military Defeat

2021年12月24日(金)18時03分
ジョン・フェン
映画『長津湖』

Aly Song -REUTERS

<2021年の映画で最大のヒット作となるのは、中国軍が米軍に「勝利」した戦いを描く中国のプロパガンダ的な愛国作品か、それとも......>

2021年、興行収入において世界で最も成功した映画は、中国の「愛国映画」という結果になるかもしれない。その映画とは、朝鮮戦争の初期にアメリカ率いる国連軍が中国人民志願軍(PVA)に敗北した「長津湖の戦い」を題材にした『長津湖』だ。中国共産党中央宣伝部が2億ドルを投じて製作した本作は、10月1日の国慶節に合わせて公開されて以来、9億200万ドルのチケット売上を記録している。

IMDb(インターネット・ムービー・データベース)の一部門で、映画の興行成績を追跡しているサイト「ボックス・オフィス・モジョ」によれば、3時間に及ぶこのアクション大作は、7月に100周年を迎えた中国共産党の祝賀行事の一環として制作された。売上の99%以上は、中国内の映画ファンに占められている。アメリカで公開されたのは11月19日だ。

アメリカの映画評サイト「ロッテン・トマト」でのスコアは33%となっている本作だが、中国での興行成績は2017年の『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』を抜き、すでに史上最高を記録している。どちらの作品も、主演は中国の人気アクションヒーローであるウー・ジンが務める。なお『長津湖』は、中国史上で最高の制作費が使われた作品でもある。

この戦争映画は、1950年の冬に中国人民志願軍と国連軍が交戦した「長津湖の戦い」を、中国語で赤裸々に描いた大作だ。朝鮮戦争は1950年6月、ソビエト連邦の支援を受ける朝鮮人民軍が北緯38度線を越え、韓国に侵入した後、国連軍がそれを押し戻す形で勃発した。

双方に多大な損害と犠牲者が

朝鮮戦争は、毛沢東の逸話のなかでは、「アメリカの侵略に抵抗し、朝鮮を助けるための戦争」とされている。その一部である「長津湖の戦い」は、武力で勝るアメリカを、中国人民志願軍が朝鮮との国境から押し戻した戦いとして称賛されている。

この血みどろの戦いは双方に多大な損害をもたらし、国連軍は戦術的撤退を余儀なくされた。中国人民志願軍の犠牲者は5万人弱と推定され、アメリカ側は1万8000人近くが犠牲になったとされている。

『長津湖』に次いで、2021年第2位の興行収入を稼ぎ出しているのも中国映画だ。『こんにちは、私のお母さん』というこのコメディ映画は、2021年2月に公開されてからこれまでに8億2200万ドルを売り上げており、第3位につける『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』を約5000万ドル上回っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中