最新記事

写真集

ヨシダナギ、アフリカ少数民族の次は「ドラァグクイーン」の理由

2020年5月28日(木)17時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ヨシダナギ『DRAG QUEEN -No Light, No Queen-』(ライツ社)より

<少数民族を撮影した色鮮やかな作品で知られる写真家、ヨシダナギ。このたび、ドラァグクイーンの写真集を発売した彼女はこう語る。「自分とちがう人ほど、かっこいい」>

初めて海外に行ったのは20歳のとき。初めて一眼レフを買ったのは21歳のとき。その後ヨシダナギは、単身アフリカへ渡り、独学で写真を学び、少数民族たちの写真を撮って、フォトグラファーになった。

当初は被写体である少数民族と同じ格好になって撮影するスタイルも注目されたが、アフリカをはじめ世界中の少数民族を撮影した彼女の作品は、鮮やかな色彩にあふれ、高く評価されている。いま脚光を浴びる日本人写真家の1人だ。

2017年には、エチオピアのスリ族を撮影した初の写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)と著書『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)で、講談社出版文化賞(写真賞)を受賞。同年、Pen誌(CCCメディアハウス)が主催する「Penクリエイター・アワード2017」にも選出されている。

yoshidanagi20200528-2.jpg

ヨシダナギ/1986年生まれ。近年はほかに、阿寒湖イコロシアター「ロストカムイ」キービジュアル撮影、山形県「ものつくり」プロモーションのムービーディレクションなども手掛けている

そんなヨシダナギだが、次なる被写体はドラァグクイ-ンだという。男性だが女装をして、自己表現をするパフォーマーたち。なぜ、ドラァグクイーンなのか?

「自分とちがう人ほど、おもしろい。かっこいい。幼少期からそう思ってきました。世界中の先住民族や少数民族に会い、撮影してきたのは、そんな想いがずっと心の中にあったからです」と、ヨシダは言う。

「今回被写体にドラァグクイーンを選んだのも、私と異なる彼女たちへのそんな興味でした。そして、実際にニューヨークとパリで出会った彼女たちの立ち姿には、言葉にできない美しさと強烈な存在感がありました」

その存在感をヨシダは「複雑な歴史や自負を両肩に背負い受け入れた人間だけが発するもの」だと言う。その点で、アフリカの少数民族と共通しているのだと。

そうして完成したのが、18人のドラァグクイーンの全57カットを1冊にまとめた『DRAG QUEEN -No Light, No Queen-』(ライツ社)だ。

この作品集には、実際の撮影風景をおさめたプロモーションムービー(ニューヨーク篇、パリ篇の2本)と、ヨシダ自身によるドラァグクイーン全員のインタビューを収録したDVDが特典として付く。また、8月12日からは、東京の西武渋谷店を皮切りに全国の百貨店などで同名の個展も開催予定だ(※)。

yoshidanagi20200528-3B.jpg

ヨシダナギ『DRAG QUEEN -No Light, No Queen-』(ライツ社)より

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

ガザ交渉「正念場」、仲介国カタール首相 「停戦まだ

ワールド

中国、香港の火災報道巡り外国メディア呼び出し 「虚

ワールド

26年ブラジル大統領選、ボルソナロ氏長男が「出馬へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中