デーブ・スペクター「日本がオリンピックを美化するのはテレビのせい」

2020年3月28日(土)20時00分
小暮聡子(本誌記者)

――日本でオリンピックが「国民的行事」のようになるのは、テレビの影響なのか。

まずは、テレビが選手を「よいしょ」している。日本では、スポーツ選手はメダルを取れば一生食べていける。CMに出たり、バラエティー番組に出たり、イベントに講演と引っ張りだこだ。

20代で引退して、スポーツタレントになって一生それが続く。そのメダルのため、オリンピックのために、日本は巨額のお金を使っている。引退してから芸能事務所に入る人には、少しでもいいから国にお金を返せよと言いたい(笑)。

NHKの大河ドラマ『いだてん』を見ても分かるが、日本は昔から、どうにかして海外に認められたいというのが根底にある。日本が世界を相手にメダルを取った!と。

でもアメリカには国外から住みたいという人が勝手に押し寄せてくる。(お笑いコンビ・ピースの)綾部(祐二)もそう。だから、アメリカがすごいといちいち認められようとしなくていい。

日本だって近年は世界中から住みたい人、働きたい人が殺到しているのだから、今さら「すごい」ことを証明しなくてもいいのに。

――日本と違ってアメリカでは、オリンピックを「みんなで応援しなきゃいけない」という雰囲気にはなっていない?

なっていない。アメリカ人の認識では、アスリートはあくまで自分がそのスポーツをやりたいからやっているわけで、国のためにやっているわけでもないし、見ている側もアスリートにお願いしてやってもらっているわけではない。スポーツに対する態度がフラットだ。

この認識は、アイスホッケーや野球などプロスポーツを見るときと同じだ。プロはすぐに解雇になるしガチで勝負している。プロスポーツというのは商売であり、ファンもお金を払って見に行ったり、グッズを買ったりしてみんなでチームをサポートする。

(MLBの)ニューヨークのヤンキースやメッツは市民のものでもあって、日本の広島カープに近い。それなら応援してもおかしくないだろう。選手もチャリティーで野球をやっている人はいないし、商売として成り立っている。

でも日本はそうじゃなくて、(プロスポーツ大会ではないオリンピックについても)特にそのスポーツのファンでもないのに、必死でがんばってきた選手をみんなで応援しなくてはいけないような雰囲気がある。

アメリカでも、記録を出したり成功した選手のことはものすごく尊敬する。だからといって日本のように、国のためにがんばってくれて有難うございます、というのはない。アメリカはもっとビジネスライク。日本はアマチュアスポーツをよいしょしすぎだと思う。

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