最新記事
韓国社会

告発する国、韓国 MeTooから拡大、芸能人の「黒歴史」暴かれる

2020年1月8日(水)20時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

学生時代のいじめを告発された芸能人たち

K-POPの人気女性歌手ヒョリンは、中学生時代に3年間にわたっていじめられていたとしてSNSを通じて告発された。健康的なイメージのヒョリンの過去を暴いたAさんによると、ヒョリンはAさんを長年にわたって脅迫、洋服や現金を奪ったほか、Aさんとその友人たちに暴行を加えていた。しかも、暴行するときは必ず相手にも自分を一度殴らせて、双方による暴行という形にしていたという。

ヒョリン側は一度はこの訴えを否定し、逆にAさんを名誉毀損で訴えるとしていたが、最終的に「Aさんと話し合い円満解決した」と発表した。だが、その後もネット上にはヒョリンに対し#学Tooの付いたコメントが続き、ヒョリン側の対応のまずさが目立った騒動だった。

ヒョリンは女性アイドルグループSISTERのメインボーカルとして高い人気をもち、2018年グループ解散後は個人事務所を立ち上げソロ活動をスタートしたばかり。真実がどうであれ、イメージ管理が商売に大きく影響する芸能人にとって、この学Tooは打撃となってしまった。

また、人気バンドJannabiのメンバーだったユ・ヨンヒョンも、学Tooの対象となった。被害者は学生時代に発話に障害があったが、「当時それを現在Jannabiで活動するメンバーのひとりにからかわれ、ビニール袋で顔を覆った状態でロッカーに閉じ込められた。今もその時の後遺症で精神療法を受けている」と暴行を訴えた。その直後、Jannabi側は「指摘されたメンバーはユ・ヨンヒョンであり、本人はこれを認め、自らバンドを脱退することにした」と発表。バンドも当面の活動を自粛することとなった。

学Tooはデビューを目指している練習生にも起きた。日本バージョンも制作・放送され人気のあったアイドルオーディション番組『プロデュースX101』に出場していた練習生ユン・ソビンは番組登場後、学生時代に問題児だったというメッセージとともに、制服を着た姿で飲酒や喫煙する写真がネット上に広がり番組を降板。所属事務所JYPエンターテイメントからも契約解除される騒ぎとなった。

かつては「武勇伝」としてメディアで自慢されたが

韓国は上下関係が、日本よりもはっきりとしている国だ。儒教のせいだという説もあれば、徴兵制のため軍隊で上下関係を徹底的に教え込まれるためという説など様々な意見がある。筆者は韓国でソウル芸術大学を卒業したが、本人の年齢に関係なく入学年度で上下関係が決められ、先輩から受けるシゴキを何度も体験し、日本にはなかった韓国の上下関係に驚かされた。

特に男子学生は徴兵義務のため在学中に2年近く兵役に就く場合も多く、同学年でも年齢が異なる場合も多い。同期だった男性が、自分よりも5歳以上年下の先輩にひと言敬語を使わなかったばっかりに、ほうきの柄の部分で殴られたのを目の前で見たことがある。人が人を殴るのを見たのは、あの時が初めてだった。もしも、あの先輩が今有名人になっていたら、学Tooで訴えられただろうか?

テレビ番組のトークショーなどで、よく芸能人が武勇伝のように「かつて自分が悪かった」などと笑い話にして話していることがある。ひと昔前までは被害者らはテレビ画面を見ていじめられた過去を思い出し、悔し涙を流しているだけだったが、今や、自らSNSなどで事実を暴露できる時代になった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英、障害者向け自動車リース支援制度改革へ 補助金を

ビジネス

米経済下振れリスク後退は利上げ再開を意味、政策調整

ワールド

イスラエル、ヨルダン川西岸で新たな軍事作戦 過激派

ビジネス

S&P、ステーブルコインのテザーを格下げ 情報開示
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中