最新記事

映画

「アイル・ビー・バック」のせりふと共にターミネーターの時代が終わった

Now Time for Termination?

2019年11月14日(木)19時00分
デーナ・スティーブンズ

magmovie191114_Terminator2.jpg

2体に分離もできる最新型ターミネーター(写真右) ©2019 SKYDANCE PRODUCTIONS, LLC, PARAMOUNT PICTURES CORPORATION AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

猛烈に長いカーチェイスの後、ダニーの護衛にもう1人の女性が加わる。グレーの髪、不機嫌そうな表情、そしてロケットランチャーで武装した彼女。そう、お待ちかねのサラ・コナーだ。

ハミルトンが再びこの役を演じるのを見るのは素晴らしい。彼女と、後で登場するごま塩ひげを生やしたシュワルツェネッガーがそこにいるだけで醸し出される懐かしさがなければ、この作品は成り立たない。

サラは過去22年の人生を振り返って「ターミネーターを狩り、気絶するまで飲むような日々」と素っ気なく語る。しかし観客が、その暗い日常を具体的に目にすることは決してない。

私は彼女に、人生について長い告白をしてほしいと言っているわけではない。でも、この映画がフェミニスト的な主張で称賛を得たいなら、ヒロインの帰還を描く際に、彼女がこれまで経験したことと、その影響を示すエピソードがもう少し欲しかった。

シュワルツェネッガーの存在は作品に明るさをもたらし、ハミルトンと一緒にいる場面は活気に満ちている。それはシリーズ初期の傑作における2人の関係を観客に思い起こさせるからだ。

最後のタイムトラベル

未来から来たグレースは、柳のようにしなやかな体を冷酷な戦闘兵器に変えるサイバー強化能力を発揮する。ターミネーターと戦うヒーロー役を若い女性に代えたことは、シリーズがその目的と観客層を考え直した表れかもしれない。さらに、彼女が守るべき対象を有色人種の女性に設定したことで、作品に本当の意味で政治的なメッセージを持たせられる可能性もあった。

ところが本作は、テクノロジーにもディストピアや性差別、人種にも、さらにはタイムトラベルの論理的整合性にも関心がないようだ。結局、見どころはアクションくらいしかなく、映画の主人公である3人の女性のことはほとんど考えていない。

大ヒットシリーズとあって、あまりにも有名な「アイル・ビー・バック」というせりふは2つの場面で使われている。このせりふを口にする登場人物の1人は、そのまま文字どおりの意味で言う。だがもう1人はこのせりふを否定形で使う。

2人のどちらが正しいかは、興行収入が決めてくれるだろう。私としては『ターミネーター』シリーズを完全に終わらせてもらって構わない。もうこれ以上、青い球体で新たな殺し屋や女性を過去に戻す必要はない。

TERMINATOR: DARK FATE
『ターミネーター:ニュー・フェイト』
監督/ティム・ミラー
主演/アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン
日本公開中

©2019 The Slate Group

<本誌2019年11月19日号掲載>

【参考記事】【再録】スター・ウォーズから始まったハリウッドの凋落
【参考記事】ロシア初の人型ロボットは2丁拳銃使い

20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7、エネルギー市場安定化に向けあらゆる措置を講じ

ワールド

中国コスコの船舶がホルムズ海峡通過、2度目の試み 

ビジネス

金融政策「良い位置」、イラン情勢の影響見極めへ様子

ビジネス

米FRB議長、新卒者の長期的な雇用見通し楽観視 A
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 9
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 10
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中